反EU国民運動

反EU国民運動：デンマークにおけるEU懐疑主義の動向

デンマークにおいて、欧州連合（EU）への懐疑的な見解を持つ人々や団体は少なくありません。その中でも特に注目すべき存在が、「反EU国民運動（Folkebevægelsen mod EU）」です。1972年、EU（当時欧州経済共同体）加盟を問う国民投票を機に結成されたこの運動は、現在もデンマークの政治に影響を与え続けています。

歴史と目的

反EU国民運動は、EU加盟に反対する超党派の団体として誕生しました。当初は国民投票における反対運動の中核として活動していましたが、その後もEUへの批判的な立場を維持し続け、現在では欧州議会に1議席を持つまでになりました。

この運動の主要な目的は、EUからのデンマーク脱退と、欧州自由貿易連合への再加盟です。他のEU懐疑主義団体がEU改革を求めることが多い中、反EU国民運動はEUそのものからの離脱を主張する点が際立っています。彼らは、北欧理事会、国際連合、欧州安全保障協力機構、欧州評議会といった国際組織においてのみ真の民主主義と持続可能な発展が可能だと考えています。

政策と支持基盤

反EU国民運動は、リスボン条約に強く反対し、EU憲法に関する国民投票の実施を訴えています。超党派を標榜しており、伝統的な左右のイデオロギー枠組みには捉われません。そのため、国政選挙や地方選挙への出馬は原則として行っていません。

支持基盤は多様で、左派や労働組合員が多いものの、ヴェンスタ、デンマーク社会民主党、保守党、緑の党など、様々な政党からの支持を受けています。しかし、デンマーク国民党のような右派のEU懐疑主義政党とは明確に距離を置いています。

欧州議会での活動

2004年の欧州議会選挙では、反EU国民運動は国内投票で5.2％の得票率を獲得し、1議席を獲得しました。これは、1979年の欧州議会直接選挙導入以来、議席を維持し続けていることを意味します。1994年以降は、同様のEU懐疑主義を掲げる六月リストと選挙協力を行い、現在は欧州統一左派・北方緑の左派同盟に所属しています。さらに、ヨーロッパEU批判運動同盟（TEAM）にも加盟しており、同運動のコーディネーターとしてイェスパー・モーヴィル氏が活動しています。

まとめ

反EU国民運動は、デンマークにおけるEU懐疑主義を代表する政治団体です。EU脱退という明確な目標を掲げ、超党派的な支持基盤を持つ一方で、右派政党とは一線を画す独自の立場を堅持しています。欧州議会での活動を通じて、今後もデンマークのEU政策に影響を与え続ける可能性が高いと言えるでしょう。彼らの主張や活動は、EUの将来を考える上で重要な視点の一つとなるでしょう。今後の動向に注目が必要です。

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