取次 (歴史学)

取次（とりつぎ）とは

取次とは、二者の間を取り持ち、情報や意思を伝達する役割、またはその役割を担う人物を指します。歴史の中で、取次は様々な形態で存在し、それぞれの時代や権力構造の中で重要な機能を果たしてきました。

取次の呼称と役割

取次は、単なる伝達者ではなく、時には交渉や調整を行うこともありました。「申次」「聞次」「奏者」など、時代や立場によって様々な呼称が存在します。公家政権では伝奏が、武家政権では関東申次や武家執奏が、それぞれ取次としての役割を担いました。

各時代の取次

朝廷・公家政権

平安時代には、天皇や上皇への奏事を伝達する「申次」が存在しました。院政期には、院の信任を得た近臣が申次を務めました。伝奏は、上皇への奏聞や天皇の勅旨伝達を仲介する役職として、幕末まで続きました。

室町幕府

室町幕府における取次は、国人や守護、寺社、公家との連絡役を担いました。将軍の近習が京都周辺を、管領や有力守護が地方を担当しました。取次は、将軍の御内書に添状をつけたり、幕命を補足するために使者を派遣するなど、具体的な行為を行いました。しかし、取次と取次対象との間に癒着関係が生まれることもありました。

戦国時代

戦国時代には、主君と家臣の間で、文書や口頭による意思疎通において取次が介在するのが一般的でした。家臣への発給文書は、取次が主君の意志をうけたまわって記した奉書が通常であり、主君の名で発せられる直書は稀でした。この時代の取次は「出頭人」と称され、武田信玄・勝頼に仕えた跡部勝資などが知られています。

織田政権

織田信長は、家臣の木下藤吉郎（豊臣秀吉）に毛利氏との外交交渉を命じました。この任務は「申次」と表記されています。織田政権では、他の戦国諸大名との取次には、その方面の担当司令官があたるケースが多かったようです。

豊臣政権

豊臣政権では、秀吉と各大名のあいだを仲介する「取次」が大きな権限を有しました。次第に石田三成・浅野長政ら秀吉側近の吏僚によって取次がなされるようになり、政権の公的な制度として運用されました。皆川氏は、豊臣政権の東国「取次」役となった徳川家康の政治力によって本貫の存続が許されました。

幕藩体制

幕藩体制下では、朝廷側からは武家伝奏が、幕府側からは京都所司代が、公武間の取次を行いました。幕府初期には、将軍の側近である近習出頭人が幕政の中心にいましたが、3代将軍徳川家光の頃には、老中・若年寄の制が整えられ、出頭人の役割は縮小しました。各藩は、江戸に留守居役を設置して聞次の役割を負わせ、幕府側の老中実力者に「取次の老中」となってもらうことを依頼しました。

将軍の取次

将軍の取次としては、近習として側衆がありました。5代将軍徳川綱吉の時代には、老中と将軍の間を取次ぐ側用人が設置されました。大名が将軍に拝謁する際には、奏者番が取次役を勤めました。

各藩の取次役

越後長岡藩には、評定役が取りまとめた重要案件を藩主に取り次ぐ機関として「取次」がありました。津軽藩などでは、側用人に藩主との公務上の取次を一括しておこなわせていました。

まとめ

取次は、時代や権力構造によって様々な役割を担ってきました。単なる伝達者としてだけでなく、交渉や調整、情報収集など、多岐にわたる機能を果たし、歴史の舞台裏で重要な役割を演じてきたのです。

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