跡部勝資

跡部勝資（あとべ かつすけ）

跡部勝資は、戦国時代から安土桃山時代にかけての武将で、甲斐武田氏の家臣として活躍しました。跡部氏は、もともと信濃国守護小笠原氏の庶流で、信濃国跡部郷を発祥とする一族です。室町時代には甲斐へ土着しましたが、一度は排斥されました。しかし、戦国時代になると、武田家臣として再びその名が見られるようになります。

生涯

跡部勝資は、武田信玄・勝頼の二代に仕え、側近として重用されました。信玄の時代には、山県昌景、土屋昌続、原昌胤らと共に、数多くの朱印状奉者として名を連ねています。勝頼の時代には、出頭人として家中に大きな影響力を持ちました。

『甲陽軍鑑』によると、勝資は300騎を率いる侍大将であり、武田家中で山県昌景、春日虎綱（高坂昌信）と並ぶ最大級の動員力を誇っていたとされています。また、天文18年（1549年）には、武田氏の信濃侵攻において、佐久郡の国人衆を服属させるなど、軍事面でも活躍しました。外交面では、越後国の上杉氏や常陸国の佐竹氏との同盟締結において、取次役を務めました。

天正10年（1582年）、織田信長・徳川家康連合軍による甲斐侵攻の際、勝頼と共に自害したとされています。

山梨県南アルプス市にある深向院は、跡部勝資が興因寺の玄紹宗黄を招き再興した曹洞宗寺院と伝えられています。

人物像

『甲陽軍鑑』では、勝資は長坂光堅と共に、武田家没落の原因となった奸臣として描かれています。長篠の戦いでは、勝頼に主戦論を主張して大敗を招いたとされ、御館の乱では、景勝方から賄賂を受け取ったとも伝えられています。また、『三河物語』には、武田氏滅亡時に勝頼を見捨てて逃亡したとする逸話も記されています。

一方、勝資は、外交・領国支配において、数多くの文書奉者として名を残しており、信玄・勝頼期の重要な側近であったと考えられています。武田氏が領国を拡大する中で、国衆や外交を取り次ぐ役割を担い、その制度の中核を担っていたとされています。

勝資は、出頭人として、武田家当主の側近に位置し、古参の宿老たちと対立したとされています。こうした対立が、武田家滅亡の一因になったとも指摘されています。

登場作品

映画
『信虎』（2021年、演：安藤一夫）

テレビドラマ
『おんな風林火山』（1987年、TBS、演：石橋正次）
『真田丸』（2016年、NHK大河ドラマ、演：稲荷卓央）

参考文献

平山優「跡部勝資」『新編武田信玄のすべて』新人物往来社、2008年
* 丸島和洋「武田氏の領域支配と取次-奉書式朱印状の奉者をめぐって-」平山優・丸島編『戦国大名武田氏の権力と支配』岩田書院、2008年

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