古河公方館

古河公方館（鴻巣御所）とは

古河公方館は、現在の茨城県古河市にあった中世の城館で、鴻巣御所、鴻巣館とも呼ばれていました。古河御所と称されることもあります。現在、その跡地の大半は古河総合公園として整備され、市民の憩いの場となっています。

歴史

古河公方館は、享徳4年（1455年）に初代古河公方である足利成氏によって築かれたと考えられています。これは、享徳の乱と呼ばれる内乱の際に、成氏が鎌倉から本拠地を移したことによるものです。館は古河城の本丸から南東へ約1km離れた鴻巣の地に位置し、御所沼に突き出した半島状の台地に築かれた連郭式の中世城館でした。

成氏は当初この館を拠点としましたが、その後2年ほどで近くの古河城へ移りました。しかし、天正18年（1590年）には、最後の古河公方である足利義氏の娘、氏姫がこの館を居館としました。氏姫は、豊臣秀吉の命により古河城から移り住んだのです。その後、氏姫の孫にあたる尊信が寛永7年（1630年）に下野国の喜連川へ移ると、館は主を失い、時宗十念寺の寺域となりました。現在、当時の建物は残っていませんが、城跡の大半とその周辺は古河総合公園として整備され、歴史を伝える場所となっています。

構造

古河公方館は、御所沼に向けて東から西へ延びる半島状の台地上に位置していました。城域は東西700mに及び、西側から順に、1曲輪（根城）、2曲輪（中城）、外郭（宿）の3つの区画に分かれていました。それぞれの区画の間には空堀が設けられ、堀の西側には土塁も築かれており、東側からの攻撃に備えた構造となっていました。

1曲輪（根城）: 本丸に相当すると考えられ、現在は「公方様の森」と呼ばれています。
2曲輪（中城）: 昭和5年まで十念寺がありましたが、現在は民家園（旧飛田家住宅、旧中山家住宅）となっています。
* 外郭（宿）: 城下集落が形成され、現在は公園の外側となっています。

御所沼は天然の堀として機能し、北側は虚空蔵菩薩の丘陵まで、南側は駒ヶ崎・市立サッカー場の丘まで広がっていました。西側は渡良瀬川まで湿地帯が続き、古河城と繋がっていました。

遺構

現在も1曲輪（根城）の東側には、堀切と土塁の跡が残っています。北側にも土塁跡があり、2曲輪（中城）の東側にも堀切と土塁の痕跡が一部残されています。外郭（宿）の遺構は不明確ですが、地形から東側が堀切られていたと考えられています。御所沼は、第二次世界大戦後に干拓・埋め立てられましたが、平成8年（1996年）に復元され、当時の姿を偲ぶことができます。

伝承

古河公方館があった半島状台地の西端には、「天神松」と「胞衣松」と呼ばれる2本の松がありました。これは、氏姫が足利義親を出産した際、足利の血を継ぐ男子誕生を喜び、御所の西北に天神のほこらを建て、その南側に胞衣（胎盤）を埋めて、それぞれに松の木を植えたという言い伝えに由来します。この松は長い間大切にされてきましたが、公園の造成が始まった1972年には残っていませんでした。しかし、故事にちなみ1996年に新しく植えられました。

まとめ

古河公方館は、中世の歴史を今に伝える貴重な史跡です。古河総合公園として整備された現在、市民の憩いの場として親しまれています。訪れる人々は、往時の姿を想像しながら、歴史のロマンに浸ることができるでしょう。

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