古河城

古河城の歴史と変遷

古河城は、茨城県古河市に位置し、渡良瀬川の東岸に築かれた日本の城です。その歴史は、平安時代末期に下河辺行平が築いた館に遡ります。室町時代には、古河公方・足利成氏が本拠地とし、戦国時代には関東の中心的な拠点の一つとなりました。江戸時代には、譜代大名が城主を務め、将軍の日光社参の際の宿泊地としても重要な役割を担いました。しかし、明治時代の廃城令と渡良瀬川の大規模な改修により、そのほとんどが失われました。

起源と中世の歴史

古河城の起源は、平安時代末期から鎌倉時代初期にかけて、下河辺行平が古河の立崎（竜崎）に築いた館とされています。この地は、渡良瀬川と沼地に挟まれた半島状の台地で、天然の要害でした。行平は、この地を拠点に勢力を拡大し、後の古河城の基礎を築きました。

室町時代には、古河公方・足利成氏が本拠地を鎌倉から移し、古河城は政治の中心地となりました。成氏は、当初は古河鴻巣の古河公方館を居館としましたが、後に立崎の古河城を整備し、本拠地としました。古河公方は、約130年間、この地を支配し、古河は関東における重要な拠点の一つとして繁栄しました。戦国時代には、上杉謙信や北条氏康といった有力な戦国大名が、古河城をめぐり争奪戦を繰り広げました。

江戸時代の古河城

江戸時代に入ると、古河城は古河[[藩]]の藩庁として、多くの譜代大名が城主を務めました。徳川将軍の日光社参の際には、宿城として利用され、江戸の北方の守りとしての役割も担いました。城下には、日光街道の宿場町である古河宿が発展し、渡良瀬川を利用した水運も盛んに行われ、交通と物流の要所として栄えました。しかし、度重なる渡良瀬川の洪水に悩まされ、洪水対策が重要視されました。

明治以降の変遷

明治時代に入ると、廃城令により古河城は廃城となり、建造物はすべて破却されました。さらに、明治末期に開始された渡良瀬川の大規模な改修事業により、城跡のほとんどが消滅しました。この改修工事は、治水対策を目的としたものでしたが、かつての城郭を徹底的に破壊するものでした。現在では、堤防や河川敷に変わり、わずかな遺構を残すのみとなっています。

古河城の構造

中世の構造

中世の古河城の構造は、詳しい記録が残っておらず、不明な点が多くあります。しかし、足利成氏の時代には、本丸付近が城域であったと推定されています。また、古河公方館と一体となって、広大な水城を形成していたと考えられています。

近世の構造

江戸時代の古河城は、渡良瀬川の東岸に位置し、複数の曲輪が直線状に配置された連郭式でした。主な曲輪として、北から観音寺曲輪、桜町曲輪、三の丸、二の丸、本丸、頼政曲輪、立崎曲輪がありました。また、桜町曲輪の東には、水堀（百間堀）で隔てられた諏訪曲輪がありました。これらの曲輪には、武家屋敷や藩主の御殿が置かれ、城の機能が分散していました。天守は築かれず、本丸には御三階櫓が建てられ、実質上の天守の役割を果たしました。城内には、茂平河岸があり、物資の輸送に利用されました。また、水堀の周囲には、出城としての役割を持つ寺社が配置されていました。

現在の遺構

渡良瀬川の改修により、城跡の多くが失われましたが、現在でもわずかな遺構が残っています。

頼政神社: 観音寺曲輪の土塁上に移設され、土塁の一部が残っています。
桜町曲輪北側土塁（獅子ヶ崎土塁）: 市街地の中に一部が残っています。
古河歴史博物館: 諏訪曲輪跡地に建てられ、土塁と堀の一部が残っています。
福法寺山門: 二の丸御殿の乾門が移築されたものです。
坂長: 城内の文庫蔵・乾蔵を移築したとされる建造物です。

その他、追手門や本丸跡地には石碑や標柱が設置され、かつての城域を示しています。

古河城を舞台とした作品

古河城は、文学作品の舞台としても描かれています。

南総里見八犬伝: 曲亭馬琴の読本に、古河公方期の古河城が「芳流閣」として描写されています。
火男: 吉来駿作の歴史小説で、結城合戦にともなう古河城攻防戦が題材となっています。
風魔: 宮本昌孝の歴史小説で、後北条氏滅亡後、古河公方家の氏姫に仕える忍者の活躍が描かれています。

まとめ

古河城は、その歴史の中で様々な役割を担い、多くの人々の生活に影響を与えた城でした。現在は、その姿をほとんど失っていますが、その歴史を語り継ぐ遺構や資料が残されています。これらの遺構や資料を通じて、かつての古河城の姿を想像し、歴史を感じることができます。

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