台北府城北門

台北府城北門、正式名称を承恩門というこの門は、かつて存在した台北府城の五つの門のうち、唯一現存する貴重な建造物です。台北市中正区に位置し、国の第一級古蹟として、その歴史的価値を今に伝えています。

この北門は、1882年に清朝の統治下で着工され、1884年に完成しました。当時の台北府城は城塞都市としての機能を持っており、北門はその北の守りの要としての役割を担っていました。城壁は住民を守るという名目がありましたが、実際には統治機関を守るという目的が主であったとされています。1895年の下関条約により台湾が日本の統治下に入ると、台北府城の城壁は上下水道整備の資材として転用され、門のみが残されました。1935年には史蹟名勝天然紀念物保存法により保護対象となり、その歴史的価値が認められました。

戦中戦後、台北府城とそのほかの四つの門は撤去や改修が進められましたが、北門だけは当初の姿を留めています。一時は都市開発の流れの中で撤去の危機に瀕しましたが、文化財保護の観点から1998年9月3日に史跡として保護されることになりました。

北門は二層構造となっており、下層部分は通路として利用可能です。しかし、上層部の建物内部は一般公開されていません。また、門の南側の開口部手前には、日本統治時代に設置された水準点が現存しており、歴史の痕跡を今に伝えています。

近年、台北市長柯文哲が推進する「西区門戸計画」により、北門を跨いでいた忠孝橋（通称北門高架橋）が2016年に撤去されました。さらに2017年8月には北門広場が完成し、周辺地域の景観が大きく改善されました。同年1月に供用が開始された台北行旅広場と共に、ユニバーシアードを控えた台北市のランドマークとしての風格を取り戻し、周辺の古蹟と一体化した観光エリアとして、多くの人々が憩う場所となっています。

北門の呼称については、資料によって差異が見られます。中華民国文化部文化資産局では史跡の登録名として「台北府城門－北門」とし、台北を扱う文脈では単に「北門」と表記されることが多いです。

この北門は、台北の歴史を物語る上で欠かせない重要な遺産であり、その保存と活用が進められています。訪れる人々は、この門を通じて過去と現在が交錯する台北の魅力を感じることができるでしょう。

承恩門 文化部

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