台子

台子（だいす）とは

台子とは、茶道で用いられる棚物の一種で、水指などの茶道具を置くためのものです。格式の高い茶礼で使われることが多く、特に真台子は献茶式など重要な儀式で用いられます。茶道の点前の精神的、理論的根幹を成すとされ、奥儀、奥伝として最後に伝授される習わしがあります。

形状

台子は、通常、長方形の板2枚を柱で支えた直方体の構造をしています。上の板を天板、下の板を地板と呼び、地板の方が厚くなっています。柱は、手前側を勝手柱（左）、客柱（右）、奥側を角柱（左）、向柱（右）と呼びます。

台子の種類

真台子: 真塗りの4本柱で、最も格式が高い台子です。大型で、京間以外では畳からはみ出るほどです。皆具と呼ばれる、水指、杓立、建水、蓋置を同じ素材、意匠で揃えた道具と合わせて使われます。
竹台子: 桐木地に竹の4本柱で、村田珠光が創案したと伝えられています。一般的に見られるのは、千利休が炉用に改変した小型のものです。
及台子: 2本柱の台子で、及第台子とも呼ばれます。科挙の合格者が通る門や、合格者の作文を置く台に由来すると言われています。
高麗台子: 宗旦好みと遠州好みがあり、名称は同じでも形状は全く異なります。宗旦好みは小ぶりの真塗りで、琉球貿易で渡来した唐物の卓を模したもの。遠州好みは木地製で、棚に近い形状です。
その他の台子: 流派ごとに様々な好み物があり、真台子から爪紅台子、桑台子、老松台子、及台子から銀杏台子などが好まれて使われます。

由来

台子の起源は、1267年に南浦紹明が宋から持ち帰ったものが、崇福寺、大徳寺を経て、夢窓疎石によって点茶に使われたのが始まりとされています。足利義政の時代に、村田珠光が能阿弥とともに寸法や茶式を定めたと言われています。元々は大きなものでしたが、15世紀末までに小型化されたと考えられます。書院式の茶礼には台子が用いられ、そこから大棚、小棚、長板などが派生し、棚物を用いない運び点前も考案されたとされています。

点前

台子の点前は、流派によって異なりますが、格式の高い棚物として、長板とほぼ同様に扱われます。小棚の点前と比較すると、柄杓、蓋置、建水などの扱いに違いが多いですが、秘伝とされる台子点前と比較すれば簡素なものです。

秘伝化

台子が茶の湯で使われた記録は、1537年の『松屋会記』が初出です。その後、津田宗達が盛んに用いましたが、本能寺の変の頃までにはほとんど使われなくなっていました。

後世の茶書には、千利休が改めた台子点前を、豊臣秀吉が秘伝として限られた者に伝授したという逸話が残っています。特に、1585年の秀吉の禁裏献茶で台子点前が用いられたことが、台子点前が特別なものと位置づけられる契機となりました。

千宗旦の頃には、千家流で書院の台子と数寄屋の台子の区別があったようです。一方、武家茶道では、様々な飾り方が伝承され、流儀化が進んでいました。利休は台子を遠ざけていたようですが、そのことが逆に台子を高尚なものに押し上げ、皆伝の証としての台子点前という位置づけが確立したと考えられます。

奥秘十二段

裏千家などでは、「奥秘十二段」として12通りの点法が定められています。表千家では、行之行が「乱」、真之行が「真台子」と呼ばれています。「十段」と言った場合には、この2つを除外します。

草之草
草之行
草之真行
草之真
行之草
行之行（表千家：「乱」）
行之真草
行之真
真之草
真之行（表千家：「真台子」）
真之行草
真之真

台子七人衆

利休が改定した台子点前を秀吉が伝授した7人を指します。

豊臣秀次
蒲生氏郷
細川忠興（三斎）
木村重茲
高山右近（南坊）
瀬田正忠（掃部）
芝山宗綱（監物）

もう一度検索