台所戦争

『台所戦争』：感謝祭の宴は、大混乱の始まり？

1949年、アカデミー短編アニメ賞を受賞した名作『台所戦争』（原題：The Little Orphan）は、トムとジェリーシリーズの中でも特に人気が高い作品の一つです。劇場公開時には『食いしん坊の子ねずみ』というタイトルで上映されました。

物語は、感謝祭の夕食準備が進む賑やかな家庭から始まります。ジェリーは孤児院からやってきた小さなネズミ、ニブルスを預かります。しかし、食料庫は空っぽ。ジェリーは困り果て、トムのミルクを拝借しようとしますが、トムに見つかり、ミルクをすべて飲まれてしまいます。

諦めきれないジェリーは、ニブルスを連れてダイニングへ忍び込みます。そこには、ローストターキーや様々なデザートが美しく並べられた、豪華な感謝祭の食卓が広がっていました。ニブルスは想像をはるかに超える大食漢で、次々とご馳走を平らげていきます。ロウソクにまでかじりつき、ジェリーを何度もハラハラさせます。

その騒ぎでテーブルからオレンジが転げ落ち、トムが目覚めます。ピルグリム・ファーザーズの衣装をまとったジェリーとニブルスを目撃したトムは、今度はインディアンの恰好をして、テーブルの上で激しい追いかけっこを始めます。三つ巴の戦いは、予測不能な展開で、見ている者を飽きさせません。

トムはついにジェリーを捕まえ、勝利を確信しますが、ニブルスの活躍により、逆にコテンパンにやられてしまいます。トムは降伏し、トムとジェリーは和解。感謝祭の夕食を始める前に祈りを捧げます。

しかし、その直後、ニブルスがローストターキーを全て食べてしまうという、予想外の結末が待っていました。

登場キャラクター：それぞれの個性と活躍

トム：昼寝中に騒ぎに巻き込まれ、ジェリーとニブルスを追いかけることになります。箒をインディアンの羽根飾りとして使用し、様々な手段を使ってネズミたちを捕まえようとしますが、ニブルスの活躍の前に敗北を喫します。

ジェリー：孤児院から来たニブルスの面倒を見ることになります。ニブルスの予想外の行動に振り回されながらも、トムとの戦いで窮地に陥った時にニブルスに救われます。

ニブルス：孤児院からの小さなネズミで、驚くほどの食欲を持っています。食べられないものまで食べてしまうほどの食いしん坊ぶりで、ジェリーを何度も危機に陥れますが、トムとの戦いでジェリーを救う活躍を見せます。そして、最後はローストターキーを独り占めします。

お手伝いさん：感謝祭の料理を作り、食卓を準備する役どころですが、本作ではワンシーンのみの登場で、セリフもありません。

制作スタッフと補足情報

監督：ウィリアム・ハンナ、ジョセフ・バーベラ

製作：フレッド・クインビー

作画：ケネス・ミューズ、エド・バージ、レイ・パターソン、アーヴン・スペンス

音楽：スコット・ブラッドリー

1960年のテレビ放映時には、一部シーンが再編集されました。また、DVD版では、人種差別的な描写を避けるため、いくつかのシーンが修正されています。1957年には、シネマスコープでリメイク版『Feedin' the Kiddie』が制作されましたが、日本未公開です。

エンドクレジットには「AN M.G.M Tom and Jerry CARTOON」の表示がありますが、「MADE IN HOLLYWOOD, U.S.A.」の表示はありませんでした。

『台所戦争』は、感謝祭の賑やかさとトムとジェリーのコミカルな戦いを巧みに融合させた、何度でも観たくなる名作です。予測不能な展開と個性豊かなキャラクターたちが織りなす物語は、今もなお多くの人々を魅了し続けています。

もう一度検索