台湾省戒厳令

台湾省戒厳令：38年間続いた戒厳下の台湾

1949年5月20日、中国国民党政権下の台湾省で戒厳令が布告されました。これは、中国大陸での国共内戦の激化を背景に、陳誠主席によって発布されたもので、台湾全土を戒厳下に置きました。この戒厳令は、1987年7月15日、蔣経国総統によって解除されるまで、実に38年間も継続されたのです。この期間は「戒厳時代」と呼ばれ、台湾の歴史に深く刻まれた時代となりました。

戒厳令発布の背景と拡大

中国大陸における国共内戦は、国民党にとって劣勢を強いられる状況に陥っていました。1948年には、新疆省、西康省、青海省、台湾省、西蔵地方を除く中国全土に戒厳令が敷かれ、翌1949年には、台湾省でも個別戒厳令が発布されました。台湾省は、警備総司令部によって5つの戒厳区に分割され、厳重な管理下に置かれました。

中国大陸での国民党の敗北が進むにつれ、台湾の戦略的重要性が高まりました。1949年7月には新たな全国戒厳令が施行され、台湾も接戦地域に指定されました。翌年には、立法院によって台湾が接戦地域に指定されることが追認されています。

戒厳令下の台湾社会

戒厳令下では、国民の自由は厳しく制限されました。「台湾省戒厳期間新聞紙雑誌図書管制弁法」や「懲治叛乱条例」、「戡乱時期検粛匪諜条例」など多数の法令が制定され、言論、出版、集会、結社の自由は著しく制限されました。

さらに、1949年7月には省政府職員に対する連帯保証制度が導入され、これがのちには公的・私的組織全体に広がり、国民に対する一種の政治審査制度として機能しました。また、1950年には「台湾反共保民委員会」が設置され、反共体制強化のための組織が活動を開始しました。

このような厳しい統制下で、国民党政権は共産主義者や反体制派への弾圧を強行しました。多くの逮捕、投獄、処刑が行われ、この時代は「白色テロ」として知られる暗い歴史となっています。

戒厳令解除への道

中国大陸では、鄧小平による改革開放政策が進展し、国共間の対立は緩和傾向を示しました。しかし、台湾では蔣介石、そしてその後を継いだ蔣経国は「三不政策」を堅持し、中国共産党との接触を避け続けました。

しかし、台湾内部では民主化を求める声が高まり、中壢事件、橋頭事件、美麗島事件などの抗議活動が発生しました。1986年には五一九緑色運動など大規模なデモが行われ、戒厳令解除を求める声はますます強まりました。

1987年、隠蔽されていた三七事件が暴露されたことを契機に、アメリカ合衆国下院は台湾政府に対して戒厳令解除を求める決議を可決しました。その後、台湾国内でも戒厳令解除を求める声が強まり、蔣経国総統はついに1987年7月15日、戒厳令の解除を発表しました。

戒厳令解除後の変化

戒厳令の解除は、台湾社会に大きな変化をもたらしました。出入国管理、出版物の管理が軍から内政部に移管され、報禁が解除されました。さらに、「動員戡乱時期人民団体組織法」が可決され、結社が合法化、多くの政党が結成されるなど、台湾は民主化への道を歩み始めました。

戒厳令の影響と合法性

戒厳令は台湾社会に大きな影響を与え、多くの国民の人権が制限されました。白色テロによる犠牲者数は公式には把握しきれていませんが、数千人に及ぶと推定されています。

また、戒厳令の合法性については論争があります。戒厳令発布の手続きに違法性があったという主張も存在しており、現在でも議論が続いている問題です。

まとめ

台湾省戒厳令は、台湾の歴史において重要な転換点となりました。38年間続いた戒厳令は、台湾社会に深い傷跡を残しましたが、同時に民主化への道を切り開く契機ともなったのです。この戒厳令の時代を理解することは、現代台湾の民主主義を理解する上で不可欠です。

もう一度検索