西蔵地方

西蔵地方の歴史と行政沿革

西蔵地方（せいぞうちほう）は、中華民国で名目的に設置された省級の行政区画ですが、実質的にはチベットがその地域を支配していました。この地域に関する歴史的背景は、特に辛亥革命（1911年-1912年）以降のチベット政府ガンデンポタンの動向に深く関連しています。

辛亥革命の後、清国（大清国）が滅亡し、チベットとモンゴルは独立国家としての地位を主張しました。ガンデンポタンは国際的な承認を得るため、外交活動を展開しました。これに対して中華民国は、チベット全域を中国の領土と主張し、実効支配を確立していたアムド地方とカム地方の北部を甘粛[[省]]や青海省に組み込みました。さらに、ガンデンポタンによって実効支配されていた地域、主にウー・ツァン地方やガリ地方を「西蔵地方」として位置付けました。

行政沿革

西蔵地方の行政状況は清末のイギリスとの外交関係の模索にも見られます。1913年には、イギリス政府が袁世凱に対してチベットを中華民国の自治国とする提案をしました。しかし、翌年のシムラ条約の批准を中華民国が拒否したため、この分離工作は失敗に終わりました。その後、ガンデンポタンは中央チベットを実効支配し、中国とは異なる国際的地位の獲得を目指すことになります。

中華民国側は、ガンデンポタンが支配している地域について名目上の省設置を行おうとし、西蔵弁事長官を任命し地方行政の整備を進めました。1920年には役職名が駐蔵弁事長官に変更され、1927年には川辺巴塘への移転が検討されましたが、実現することはありませんでした。実際に中華民国の行政機関がチベットに設置されたのは、1934年になってからであり、ダライ・ラマ13世が専使の帰還時にラサに専使行署を設置することを認めたことが始まりです。

その後、1940年にラサに国民政府蒙蔵委員会弁事処が開設されました。

行政区域

中華民国は西蔵地方を「前蔵」（首府ラサ）、「後蔵」（首府シガツェ）、「阿里」（首府ガルトク）という3つの地域に細分化しました。カム地方については、清末から民国初期にかけての状況を除き、チベットと中国の境界をディチュ河付近に設定しましたが、チベットのガンデンポタンが実効支配していた範囲を含む全域は名目的に川辺特別区に帰属させられることとなり、「西蔵地方」とは認められませんでした。

まとめ

西蔵地方の行政と歴史的な背景は、複雑な国際関係の中で形成されました。政府の活動や外交政策は、チベットの独立性を反映しており、この地域の歴史は単なる地図の領域を超え、文化的、政治的な側面にも深くかかわっています。

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