台湾青年

『台湾青年』とは

『台湾青年』は、日本統治時代と第二次世界大戦後の二つの時期に、在日台湾人留学生によって発行された機関誌です。それぞれの時代背景の中で、台湾のアイデンティティを追求し、社会運動を牽引する重要な役割を果たしました。

1920年創刊『台湾青年』

1920年（大正9年）1月11日、東京の台湾留学生と林献堂らを中心に「新民会」が設立されました。この団体は、台湾における台湾人の地位向上を目指し、学生会員を傘下の「台湾青年会」に所属させました。同年7月16日、その機関誌として月刊『台湾青年』が創刊されました。

創刊の辞には、「諸君！立てよ、時期は正に到来した。義を見て為さざるは勇なき懦怯者、世界の潮流に反抗するものは文明の落伍者」とあり、当時の国際的な潮流、特に辛亥革命、ロシア革命、民族自決主義、そして日本の大正デモクラシーの影響を強く受けていました。この雑誌は、台湾人による政治運動の最初の機関刊行物であり、編集主任は蔡培火が務め、王敏川、林呈禄、蔡恵如らが共同で編集にあたりました。雑誌社は東京市麹町区飯田町に置かれました。

『台湾青年』は、1922年（大正11年）4月1日に『台湾』と改称され、翌1923年（大正12年）からは半月刊の『台湾民報』として刊行されるようになりました。『台湾青年』および『台湾』では日本語と漢文が併用されていましたが、『台湾民報』からは中国白話文が用いられるようになりました。日本内務省や台湾総督府からの干渉を受けながらも、誌名を変えながら発展し、日本国内だけでなく台湾島内でも広く支持を集めました。

1960年創刊『台湾青年』

第二次世界大戦後の台湾は、戒厳令下の恐怖政治下にあり、思想や言論が厳しく統制されていました。社会、政治、経済、歴史、文化などあらゆる面で政府の一方的な宣伝だけが許され、それに反対する意見は一切認められませんでした。このような状況下で、1960年4月10日に新たな『台湾青年』が創刊されました。この雑誌は、台湾に関する自由な論説を、言論の自由が保障された日本にいる台湾人から発信することを目的としており、王育徳、黄昭堂ら在日台湾人留学生有志によって、隔月刊誌として台湾青年社から刊行されました。

この雑誌は、思想的な左右に関わらず広く投稿を募り、日本で暮らす台湾人留学生の結束を強め、台湾青年の存在意義を世界に広めることを目指しました。創刊当初は、台湾国内では情報統制されていた政権批判などを掲載していましたが、次第に台湾独立運動の機関誌としての役割を果たすようになりました。第10号以降は月刊となり、1970年からは発行所が台湾独立連盟（1987年以降は台湾独立建国連盟）に変更されました。

『台湾青年』は、世界各地に留学した台湾人に回覧され、国際的な台湾独立運動の精神的な支柱となりました。また、台湾国内ではできなかった二二八事件の記念集会を毎年日本で開催し、政治犯の救援活動、台湾人日本兵の補償問題、長老教会国是声明の支援、美麗島事件のキャンペーン、戒厳令撤廃運動など、多岐にわたる活動を展開しました。

42年間にわたり500号を刊行しましたが、後継者不足などの理由により、2002年（平成14年）6月の停刊記念号（第500号）をもって解散しました。

参考文献

呉密察 監修、横澤泰夫 日本語版翻訳 『台湾史小事典〈増補改定版〉』中国書店（2010年）。ISBN 978-4-903316-18-5。
伊藤潔 『台湾 : 四百年の歴史と展望』中央公論新社〈中公新書〉（1993年）
若林正丈 『矢内原忠雄『帝国主義下の台湾』精読』岩波書店〈岩波現代文庫〉（2001年）

関連項目

台湾学生社

外部リンク

『台湾青年』創刊号、1960年4月10日発行 - 聰美姐紀念基會ウェブサイト
『台湾青年』第500号（停刊記念号）、2002年6月5日発行 - 聰美姐紀念基會ウェブサイト
* 『台湾青年』 - 国立国会図書館デジタルコレクション


『台湾青年』は、それぞれの時代において、台湾の社会運動を象徴する重要な機関誌でした。その歴史は、台湾のアイデンティティと政治的変遷を理解する上で欠かせない資料となっています。

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