右門捕物帖 片目の狼

作品概要

『右門捕物帖 片眼の狼』（うもんとりものちょう かためのおおかみ）は、1959年（昭和34年）3月3日に公開された日本の時代劇映画です。東映京都撮影所が製作、東映が配給を手がけました。監督は時代劇の名匠・沢島忠が務め、色彩豊かなカラー作品として、東映スコープによるワイドスクリーン、上映時間87分で公開されました。別題として『右門捕物帖 片目の狼』とされることもあります。

本作は、探偵小説家・佐々木味津三が生み出した人気キャラクター「むっつり右門」こと北町同心・近藤右門を主人公とする『右門捕物帖』シリーズの一つであり、特に俳優・大友柳太朗が近藤右門役を演じたシリーズの記念すべき第一作となります。戦前から多くの俳優によって演じ継がれてきたこの役に、大友柳太朗は本作から主演し、以降1965年までに計8本（本作含む）のシリーズ作品が製作されました。

物語のあらすじ

物語は、江戸の町を震撼させる不気味な事件から始まります。将軍が寛永寺へ参詣するわずか五日前のことでした。将軍直属の護衛であり、その存在すら隠密とされる御庭番たちが、同じ場所で揃って首を吊って死んでいるという異常な状況で発見されたのです。北町同心の近藤右門は、現場の状況からこれが単なる自殺ではないと即座に見抜きます。事件の背後には、将軍の命を狙う恐るべき陰謀と、謎めいた秘密組織「片眼の狼」の存在が浮かび上がってきます。「片眼の狼」は周到な計画を進めており、将軍暗殺の日は刻一刻と迫っています。右門は、卓越した推理力と持ち前の行動力、そして周囲の助けを得ながら、「片眼の狼」の正体を暴き、彼らの危険な企みを阻止するために奔走します。

キャストと役どころ

主演は、主人公である北町同心・近藤右門、通称「むっつり右門」を演じる大友柳太朗です。大友は本作で初めてこの役を演じ、その後の当たり役としました。右門の頼れる協力者としては、遊び人ながら腕の立つ牛若の半次を里見浩太郎が、右門配下の密偵で矢場の店主である稲妻のお由を雪代敬子が演じます。また、おしゃべりな岡っ引き・おしゃべり伝六には堺駿二が扮し、ユーモラスな味を加えています。事件の黒幕である「片眼の狼」の首領、怪しげな医師・石井玄庵を三島雅夫が、その部下である赤沢玄蕃を阿部九州男が、さらに手下の猿廻しの吉兵ヱを沢村宗之助が演じるほか、進藤英太郎演じるあばたの敬四郎（村上敬四郎）も重要な役どころを担います。物語に関わる様々な人物として、矢場女のおゆみを桜町弘子、旅役者のふみ代を藤本二三代、その仲間の梢を花園ひろみ、弓師の六郎左衛門を原健策、北町奉行の松平伊豆守を山形勲など、東映時代劇を彩る名優たちが多数出演しています。

主なスタッフ

本作の製作には、監督の沢島忠のほか、企画として中村有隣、原作に佐々木味津三、脚本に鷹沢和善、撮影に伊藤武夫、照明に田辺謙一、録音に石原貞光、美術に桂長四郎、編集に宮本信太郎が名を連ねています。音楽は鈴木静一が担当し、作品の雰囲気を盛り上げています。和楽や振付、擬斗など、時代劇ならではの専門スタッフも参加し、作品世界を作り上げています。

その他

公開から時を経て、本作はインターネットを通じても視聴の機会が提供されました。2022年には、YouTubeの「東映時代劇YouTube」チャンネルの特別企画「大友柳太朗生誕110年記念」の一環として、同年6月11日から6月19日までの期間限定で無料配信され、往年のファンはもちろん、新たな視聴者からも注目を集めました。

参考文献としては、『大友柳太朗友の会』による『大友柳太朗快伝』（ワイズ出版、1998年）に本作に関する記述が見られます。関連作品として、他の『右門捕物帖』シリーズ作品が挙げられます。

（注：上記キャスト・スタッフ情報は映画公開時の資料に基づいています。）

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