吉原直毅

吉原 直毅（よしはら なおき）

日本の経済学者、吉原直毅氏は1967年9月19日に新潟県で生まれました。その学術的な探求は、数理マルクス経済学を基盤としつつ、厚生経済学、社会選択理論、ゲーム理論といった幅広い分野に及びます。数理的な手法を駆使し、経済システムにおける分配正義や効率性、インセンティブの問題などを深く掘り下げています。

吉原氏は、新潟県立新潟高等学校を卒業後、北海道大学経済学部経済学科に進学し、唐渡興宣氏のゼミで学びました。大学卒業後は一橋大学大学院経済学研究科に進み、修士課程では鈴村興太郎氏に師事しました。修士課程の副指導教官は高須賀義博氏、博士学位論文執筆時の副指導教官は都留康氏でした。1992年に修士課程を修了し、1995年には博士後期課程の単位を取得しています。

研究者としてのキャリアは、1995年4月、一橋大学経済学部の助手として始まりました。翌年の1996年2月には、一橋大学より博士（経済学）の学位を取得しました。その博士論文の題目は『Welfare Analysis of Economic Systems from the Viewpoint of Distributive Justice and Incentive Compatibility』であり、分配正義とインセンティブ整合性の観点から経済システムの厚生分析を行うという、その後の研究の方向性を示すものでした。同年4月には大阪大学社会経済研究所に移り助手として勤務しました。

1998年1月には北海道大学経済学部の助教授に就任。その後、1999年10月には一橋大学経済研究所に移籍し助教授となります。この間、2001年9月から2003年8月にかけては、アメリカ合衆国のイェール大学政治学部にて客員研究員として海外での研究活動も行いました。帰国後、一橋大学経済研究所にて2007年4月に准教授、2010年4月には教授へと昇進しました。

国際的な活動は続き、2013年10月から2014年9月には、再びアメリカへ渡りマサチューセッツ大学アマースト校経済学部で客員研究員を務めました。2015年12月からは高知工科大学経済・マネジメント学群の客員教授も兼任しています。2016年2月には長年在籍した一橋大学経済研究所を退職し、マサチューセッツ大学アマースト校経済学部の准教授として着任しました。その後、2018年5月から6月には一時的に一橋大学経済研究所の客員研究員を務め、同年9月からはマサチューセッツ大学アマースト校経済学部の教授に昇格し、現在に至ります。

現在も、マサチューセッツ大学での活動に加え、2020年4月からは一橋大学経済研究所の非常勤研究員、そして2020年6月からは特任教授として、日米両国で研究・教育活動を続けています。

主な著書としては、稲葉振一郎氏、松尾匡氏との共著『マルクスの使いみち』（太田出版、2006年）、岩波書店から刊行された一橋大学経済研究叢書の一冊である『労働搾取の厚生理論序説』（2008年）、そして『されどマルクス』（日本評論社、2018年）などがあり、マルクス経済学を現代的な視点から再解釈し、数理的手法を用いて分析する独自のスタンスを示しています。

その研究成果は高く評価されており、2010年10月には『労働搾取の厚生理論序説』により第1回経済理論学会奨励賞を受賞しました。さらに、2011年5月にはThe World Association for Political EconomyよりThe Distinguished Achievement Award in Political Economy for The Twenty-First Centuryが授与されるなど、国内外でその功績が認められています。

吉原氏の研究は、経済学における分配と公正という根源的な問いに対し、厳密な数理的手法でアプローチすることで、新たな地平を切り拓いています。数理マルクス経済学という独自の専門分野を確立し、ゲーム理論や社会選択理論の手法を取り入れながら、現代社会が直面する経済的な課題に対する深い洞察を提供し続けています。

もう一度検索