吉岡重三郎

吉岡重三郎：日本の映画・演劇界を牽引した実業家

吉岡重三郎（1883年-1974年）は、日本の映画・演劇界に多大な貢献を果たした実業家です。大阪市出身で、大阪高等商業学校（現在の大阪市立大学の前身校の一つ）を卒業後、野球部での活躍も知られています。

1909年、箕面有馬電気軌道（後の阪急電鉄）に入社し、営業部門を担当しました。同時期に入社した佐藤博夫氏と共に、同社の発展に貢献しました。1915年には、同社が建設した豊中球場の活用策として、全国中等学校優勝野球大会（現在の全国高等学校野球選手権大会）の開催を発案するなど、先見の明を持つ人物でした。

その後、阪急阪神東宝グループの創業者である小林一三氏と深く関わり、40年以上にわたる協働関係を築きました。小林一三氏の片腕として、数々の事業に携わりました。1934年には株式会社東京宝塚劇場（後の東宝）の専務取締役に就任し、1937年には社長に就任しました。同時期には、株式会社江東楽天地（後の株式会社東京楽天地）の代表取締役社長も務めています。

映画・演劇への関与は多岐に渡り、後楽園スタヂアム社長、そして1941年から1945年までは日活社長も務めました。さらに1942年には大映の発起人に名を連ね、戦前の日本の映画・演劇・レジャー界において中心的な存在として活躍しました。宝塚歌劇団においても理事長、副会長、会長を歴任するなど、幅広い分野で手腕を発揮しました。

太平洋戦争終戦後、公職追放となりましたが、戦後の日本の映画界再建に大きく貢献します。1946年、東京興行株式会社を設立し、社長に就任。同年には銀座一丁目に洋画専門館のテアトル銀座を開館させました。当時、銀座での映画館経営は失敗するとされていた中、アメリカ映画の上映や高品質な設備導入により成功を収め、その後の東京テアトルの成功の礎を築きました。

その後も、積極的に映画館の設立を進め、テアトル渋谷、テアトルハイツ、テアトルSS、テアトル鎌倉などを相次いで開館。1955年には、テアトル銀座跡地に旗艦館となるテアトル東京を開館し、同年に社名を東京テアトル株式会社に変更しました。さらに、テアトル池袋、テアトルダイヤ、テアトル新宿を開館するなど、東京テアトルの事業拡大に尽力しました。1958年には鎌倉市民座を吸収合併し、日本の映画館経営のパイオニアとして確固たる地位を築きました。

1974年、胆嚢炎のため死去。2014年には、『宝塚歌劇の殿堂』最初の100人の一人として殿堂表彰されています。

吉岡重三郎の長女は、子爵梅小路定行の次男である梅小路定美氏と結婚しました。梅小路定美氏は、吉岡重三郎の後を継いで東京テアトルの社長・会長を務めました。

吉岡重三郎は、戦前戦後を通じて日本の映画・演劇・レジャー産業の発展に大きく貢献した、重要な人物と言えるでしょう。その功績は、現在も日本のエンターテインメント業界に影響を与え続けています。

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