吉川神道

吉川神道（よしかわしんとう）

吉川神道は、江戸時代初期に吉川惟足（よしかわこれたり）によって提唱された神道説です。吉川惟足は、吉田神道を学んだ萩原兼従（はぎわらかねつぐ）を師とし、その教えをさらに発展させ、独自の神道理論を打ち立てました。

概要

吉川神道は、吉田神道を基礎としていますが、仏教的な色彩を排除し、朱子学の思想を取り入れた点が大きな特徴です。道徳的な側面を強く打ち出し、神道を単なる祭祀や儀礼としてではなく、国家を治めるための根本原理として捉えました。この思想は、理学神道として体系化され、神道が単なる宗教ではなく、社会や政治の基盤となるべきという考え方を提示しました。

具体的には、吉川神道は、神道を「行法神道」と「理学神道」の二つに分類し、前者は祭祀や儀礼を中心とする神道、後者は天下を治める理論としての神道と定義しました。そして、理学神道こそが神道の本質であると主張しました。さらに、宇宙の根本原理を神道と捉え、国常立尊（くにとこたちのみこと）などの神々が人々の心に内在するという神人合一説を唱えました。

また、吉川神道は、当時の社家中心の神道に対して批判的な立場を取り、官学の思想も積極的に取り入れました。神儒一致を唱え、神道を君臣の道として捉え、皇室を中心とした君臣関係を重視する考えを説きました。この思想は、江戸時代以降の神道に新たな流れを生み出し、後の垂加[[神道]]を始めとする尊王思想に大きな影響を与えたとされています。

吉川神道の思想は、会津藩主・保科正之（ほしなまさゆき）をはじめとする多くの大名に共鳴され、吉川家は寺社奉行の神道方に任命されるなど、大きな影響力を持つようになりました。また、吉川惟足に学んだ山崎闇斎（やまざきあんさい）は、後に垂加[[神道]]を創始し、吉川神道の思想をさらに発展させました。

吉川神道略系図

以下に、吉川神道の略系図を示します。

（系図の記載がないため省略）

吉川神道の影響

吉川神道は、江戸時代の神道思想に大きな変革をもたらしました。特に、神道を国家統治の理念として捉え、皇室を中心とする君臣関係を重視する思想は、後の尊王思想に大きな影響を与えました。また、理学神道という概念は、神道を単なる宗教としてではなく、学問的な研究対象として捉えるきっかけとなり、後の神道研究の発展に貢献しました。

参考文献

日本史用語研究会『必携日本史用語』（四訂版）実教出版（原著2009-2-2）。ISBN 9784407316599。 
全国歴史教育研究協議会『日本史B用語集―A併記』（改訂版）山川出版社（原著2009-3-30）。ISBN 9784634013025。 
兵庫県神社庁 編『神道史年表（再販版）』（初版：兵庫県神職会 昭和16-19年刊）明文社、1968年。

関連項目

高照神社 - 青森県弘前市。吉川惟足に学んだ弘前藩主・津軽信政を祀る。吉川神道に基づく独特の構成の社殿を持つ。

外部リンク

* 神道叢説 - 『神道大意註』(吉川惟足著)の本文 (国立国会図書館)

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