吉村道明

吉村道明：戦火からプロレスリングの伝説へ

1926年生まれの吉村道明は、波乱に満ちた人生を送った伝説のプロレスラーです。太平洋戦争では海軍の通信兵として従軍、戦後はトヨタ自動車勤務を経て近畿大学へ進学。大学時代には学生横綱に輝き、その卓越した実力は早くから注目を集めました。

1954年、吉村はプロレスラーとしての道を歩み始めます。当初は全[[日本プロレス]]協会に所属していましたが、のちに力道山に見出され、日本プロレスへ移籍。力道山の黄金時代を支えた立役者の一人として、その名を轟かせました。

吉村道明の持ち味は、軽快な動きと多彩な技でした。得意技である回転エビ固めは、幾多の死闘を制した彼の代名詞。豪快なドロップキックも、当時のプロレスラーの中でもトップクラスの技術と評価されています。

若手レスラーの育成にも力を注ぎ、アントニオ猪木（当時猪木寛至）との対戦では19連勝を記録するなど、その強さは圧倒的でした。大柄な外国人レスラー相手に、果敢に挑む姿から「火の玉小僧」の異名で呼ばれ、多くのファンを魅了しました。

吉村は、単に観客を沸かせるだけでなく、力道山を始めとするパートナーを引き立てる存在でもありました。相手の攻撃を一身に受け止め、チームの勝利に貢献する姿は、まさに縁の下の力持ち。

技術面でも高く評価されており、カール・ゴッチ、キラー・カール・コックスの来日時には、彼らが日本で初めてジャーマン・スープレックスやブレーンバスターを繰り出す相手として選ばれるほどでした。ゴッチは吉村を力道山以上に評価し、複数回対戦した記録が残っています。ゴッチから2フォール勝ちを収めた唯一の日本人レスラーという偉業も達成しています。

力道山の死後、日本プロレスは混乱の時代に入ります。しかし吉村は、馬場、猪木、大木金太郎らと共に、日本プロレスの中心レスラーとして活躍。アジアタッグ王座を何度も獲得し、「日プロ四天王」の一角として活躍しました。

晩年には「闘将」と呼ばれるようになり、46歳で現役を引退。引退試合は母校の近畿大学で行われ、多くのファンが別れを惜しみました。

引退後は、近畿大学相撲部顧問として後進の指導にあたり、大関に昇進した長岡末弘（朝潮）など多くの力士を育成しました。長らくプロレス界から身を引いていましたが、1990年代からはOB会会長として再び表舞台に立つ機会も増え始めました。

2003年、神戸市内の病院で呼吸不全のため76歳で亡くなりました。その死は多くの関係者に衝撃を与え、プロレス界に大きな悲しみをもたらしました。

吉村道明は、リングの上で見せた勇猛果敢な姿だけでなく、人としても多くの人々から慕われていました。後輩レスラーへの指導、興行の運営など、縁の下で支え続けた彼の功績は、今もなお語り継がれています。彼の生き様は、戦火をくぐり抜け、プロレスラーとして、そして指導者として、常に誠実に戦い続けた人生の証です。

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