吉田誠 (クラリネット奏者)

吉田 誠

日本のクラリネット奏者、そして指揮者としても活躍する吉田誠は、1987年に兵庫県に生まれました。

私立三田学園高等学校を卒業後、2006年に東京藝術大学に入学。すぐにフランスへ渡り、音楽家としての礎を築き始めます。2008年には、フランス地方国立リュエル・マルメゾン音楽院の高等課程を、わずか2年間という異例の速さで修了。審査員満場一致での最優秀賞に加え、ヴィルトゥオーゾ賞も獲得するという、卓越した才能を示しました。文化庁の海外新進芸術家派遣員に選ばれ、2009年にはパリ国立高等音楽・舞踊学校に首席で入学。クラリネット界の巨匠、ミシェル・アリニョンやパスカル・モラゲスらの薫陶を受け、さらに深く音楽を追求しました。その後、ジュネーヴ国立高等音楽院でも、ロマン・ギュイヨに師事するなど、ヨーロッパ各地で一流の指導者から学びを深めました。これらの研鑽を通して、第19回欧日音楽講座では、特別にミシェル・アリニョン特別賞が設けられ授与されるという栄誉に浴しています。

帰国後もその活動は精力的に展開されます。2012年から2014年にかけて、サイトウ・キネン・フィスティバル松本（現在のセイジ・オザワ 松本フェスティバル）と松本市民芸術館の共同企画である『兵士の物語』に毎年参加し、注目を集めました。2014年には、世界的権威を持つトヨタ・マスター・プレイヤーズ、ウィーンのソリストに抜擢され、日本全国ツアーに参加。巨匠ペーター・シュミードルと共に、クロンマーの『2台のクラリネットのための協奏曲』を共演し、観客を魅了しました。同年には、満を持してデビューアルバム「くらりずむ」をリリースし、レコーディングアーティストとしても第一歩を踏み出しています。

2015年には、独自の芸術観を示す自主企画リサイタルシリーズ「五つの記憶」を始動。アート・ディレクターの田村吾郎とのコラボレーションも実現し、従来のクラシックの枠を超えた新たな表現を試み、大きな話題を呼びました。同年、国際的な音楽祭であるラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンや、ルツェルン・フェスティバル・アークノヴァ2015 in 福島といった大舞台にも初登場を果たしています。

音楽メディアからの注目度も高く、2016年から2017年にかけてのシーズンには、テレビ朝日系の人気番組『題名のない音楽会』で2ヶ月連続で特集されるなど、音楽業界における存在感を確立しました。同年6月には、萩原麻未（ピアノ）、成田達輝（ヴァイオリン）、横坂源（チェロ）といった日本のトップクラスの演奏家たちと共に、メシアンの『時の終わりのための四重奏曲』の全国ツアーを行い、サントリーホール チェンバー・ミュージック・ガーデンにも初登場。また、10月には急遽代役として、ダニエル・オッテンザマーに代わりウェーバーのクラリネット五重奏曲を披露するなど、その柔軟性と実力を示しました。神戸国際芸術祭（音楽監督：ヘーデンボルク・直樹）への出演もこのシーズンに実現しています。

2017年から2018年にかけてのシーズンでは、ピアニスト小菅優が企画するプロジェクト「ベートーヴェン詣」に参加。小菅優をはじめ、フィリップ・トーンドゥル（オーボエ）、トゥーニス・ファン・デア・ズヴァールト（ホルン）、小山莉絵（ファゴット）らと共に、ベートーヴェン、モーツァルト、そして現代作曲家・藤倉大のピアノと管楽器のための五重奏曲の全国ツアーを成功させました。さらに同年8月には、小菅優をピアニストに迎えたスイス、ドイツ、オーストリア、フランスでの海外リサイタルツアーを敢行し、現地のメディアから絶賛を受けるなど、国際的な評価を確固たるものにしました。国内では、11月に浜離宮朝日ホールにて自主企画リサイタルシリーズ「五つの記憶」の第3回を開催。そして、2018年2月には、世界的名門ホールであるロンドンのウィグモアホールにデビューするという快挙を成し遂げました。

2018年から2019年のシーズンもその勢いは止まりません。ウィーン・フィルのコンサートマスターであるライナー・キュッヒル率いるキュッヒル・クァルテットとの共演や、東京文化会館小ホールでの大崎結真（ピアノ）とのリサイタルを開催。シトコヴェツキー・トリオとの日本ツアーに加え、フランス、ドイツ、オーストリアなど海外での室内楽公演も積極的に行い、精力的な活動を展開しています。

これまでに、秋山和慶、大植英次、大友直人、小林研一郎、藤岡幸夫といった著名な指揮者たちの指揮のもと、東京交響楽団、東京フィルハーモニー交響楽団、日本フィルハーモニー交響楽団、大阪フィルハーモニー交響楽団、関西フィルハーモニー管弦楽団など、国内主要オーケストラとソリストとして数多く共演しています。また、サントリーホール、東京文化会館、紀尾井ホールをはじめ、全国各地の主要なコンサートホールでリサイタルや室内楽公演を重ね、幅広い聴衆にその音楽を届けています。

クラリネットを浜中浩一、村井祐二、山本正治、松本健司、フローラン・エオー、ミシェル・ルティエック、クリストフ・ツィンパーといった名手たちに師事。さらに、ヒストリカル・クラリネットをロレンツォ・コッポラから学び、古楽器への造詣も深めています。また、ロームミュージックファンデーション音楽セミナーの指揮クラスでは、小澤征爾や湯浅勇治といった巨匠から指揮の指導も受けており、その音楽活動の幅広さを示しています。

最新のCDは、ソニーミュージックからリリースされた「ブラームス：クラリネット・ソナタ（全曲）、シューマン：幻想小曲集ほか」。このアルバムは、朝日新聞やレコード芸術で特選盤に選出されるなど、高い評価を得ています。

所属事務所はKAJIMOTOです。

使用楽器
シュヴェンク&セゲルケ Model 1000+
ビュッフェ・クランポン Tosca GL

主なメディア出演

テレビ
NHK Eテレ 『青少年のためのコンサート〜英雄伝説〜』 (2006年11月3日) - 大植英次指揮、大阪フィルハーモニー交響楽団との共演でウェーバーの『クラリネットと管弦楽のための小協奏曲』を演奏。
テレビ朝日 『題名のない音楽会』 (複数回出演)
「名曲 “動物の謝肉祭” に詩をつけた!」 (2015年1月25日) - 児玉麻里、児玉桃らとサン＝サーンスの『動物の謝肉祭』を演奏。
「世界が認めた新世代の音楽会」 (2016年2月28日)
「いま音楽業界が注目する4人の音楽家たち」 (2016年3月27日) - 特集回。
「2人の天才作曲家を世に送り出したクララ・シューマンの音楽会」 (2019年5月18日) - 小菅優とシューマン、ブラームス、クララ・シューマンの作品を演奏。

ラジオ
NHK-FM 『FMシンフォニーコンサート』 (2006年12月8日)
NHK-FM 『リサイタル・ノヴァ』 (2016年10月9日)

外部リンク

* 吉田誠 オフィシャル・ウェブサイト

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