名古屋港駅 (JR貨物)

名古屋港駅：港湾と鉄道を繋いだ歴史の終着点

名古屋港駅は、愛知県名古屋市港区に位置していた日本貨物鉄道（JR貨物）の貨物駅です。東海道本線貨物支線（通称：JR貨物名古屋港線）の終着駅として、名古屋港の開港とともに1911年5月1日に開業しました。

港湾物流の変遷と駅の役割

開業当初から、名古屋港における車扱貨物輸送の中心的な役割を担っていました。港から鉄道への貨物輸送を円滑に行うため、駅構内は現在のガーデンふ頭一帯に広がり、東陽倉庫や名古屋港水族館、ハーバーガーデンがある場所まで専用線や構内側線が敷設されていました。船舶との連携輸送も盛んに行われていたのです。

駅北側には、東邦理化港工場や東邦ガス港明工場（1998年閉鎖、現在はららぽーと名古屋みなとアクルス）への専用線も存在し、これらの工場との貨物輸送を支えていました。

しかし、コンテナ輸送の普及により車扱貨物輸送は衰退。それに伴い、名古屋港駅の役割も徐々に縮小していきました。近年では、名古屋貨物ターミナル駅への業務移譲が進められていました。

多様な貨物輸送と駅の歴史

2000年頃までは、日産化学工業への荷役線があり、化学薬品輸送のタンク車が乗り入れていました。タンクローリーによる荷役作業が行われ、化学薬品は中川運河を挟んだ対岸にある同社名古屋工場へ輸送されていました。希硝酸や濃硫酸など、様々な化学薬品が神岡鉱山前駅や速星駅などから輸送されていたことが記録に残っています。

1987年から1994年にかけては、プロ野球観戦者輸送用の旅客列車（名古屋駅～ナゴヤ球場正門前駅）が運行されていた期間があり、その際には名古屋港駅が車両留置場として使用されていました。また、開業当初からしばらくの間は、夏季限定で旅客営業も行われていましたが、後に廃止されています。

駅構造と周辺環境

名古屋港駅は地上駅で、廃止直前には着発線2本と、ほとんど使用されていない側線が残っているのみでした。駅西側にはJR東海名古屋資材センターがあり、ここから名古屋駅へレールを輸送するために、稲沢駅・名古屋駅間で週3回不定期の専用貨物列車が運行されていました。この列車には、キヤ97系気動車が貨車扱いとして使用され、DE10形ディーゼル機関車やDD200形ディーゼル機関車が牽引していました。稀に、変圧器輸送でシキ800が入線することもありました。

駅構内は北側に縮小し、線路は金城ふ頭線の跨線橋の下で途切れていましたが、かつては跨線橋の南側、現在の名古屋港ガーデン埠頭の敷地やその東側まで広がっていました。跡地は、名古屋港シートレインランド、駐車場、アルカンシエル名古屋、名古屋港管理組合の駐車場などに再開発されています。

駅周辺には、名古屋港シートレインランド、港警察署、中川運河、名古屋市交通局名港工場、名古屋市営地下鉄名港線築地口駅、名古屋市道江川線、金城ふ頭線（名古屋市道金城埠頭線）、名四国道（国道23号）、国道154号などがありました。

廃駅とその後

2023年度までは「臨時車扱貨物取り扱い駅」として機能していましたが、2024年4月1日、路線廃止に伴い廃駅となりました。長きに渡り名古屋港の物流を支えた名古屋港駅の歴史は、ここに幕を閉じました。その跡地は、新たな形で名古屋港の未来に貢献していくことでしょう。

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