神岡鉱山前駅

神岡鉱山前駅：山間の歴史と観光の交差する場所

神岡鉱山前駅は、岐阜県飛騨市神岡町船津に存在した、神岡鉄道神岡線に属する駅でした。奥飛騨温泉口駅から神岡鉱山前駅までの路線は、多くの利用客で賑わい、線内唯一の貨物輸送拠点としても重要な役割を担っていました。しかし、2006年の神岡線廃線により、駅としての歴史に幕を閉じました。現在は、新たな姿で観光客を迎えています。

開業から廃線まで：山岳地帯の交通を支えた駅

1966年、日本国有鉄道神岡線の駅として開業した神岡鉱山前駅は、当初は神岡口駅という名称でした。旅客と貨物の両方を扱い、地域の重要な交通拠点として機能していました。1984年には神岡鉄道へ移管され、1985年には現在の駅名である神岡鉱山前駅へと改称されました。

長年に渡り、神岡鉱山からの貨物輸送の中心的な役割を担い、濃硫酸の輸送などで地域経済を支えました。しかし、時代の変化と共に貨物輸送は減少し、2005年には貨物取扱いを廃止。そして2006年12月1日、神岡線の廃線に伴い、神岡鉱山前駅もその歴史に幕を閉じました。

駅舎と構造：時代を反映した簡素な造り

神岡鉱山前駅は地上駅で、島式ホーム1面1線を有していました。列車の行き違いも可能で、留置線や車庫も備え、神岡鉄道では唯一の直営駅でした。国鉄時代には駅舎が存在していましたが、2002年に奥飛騨温泉口駅へ本社機能が移転した後、撤去されました。ホームへは地下道を通ってアクセスする構造でした。

簡素な造りの駅でしたが、利用者の利便性を考慮した設計がなされていました。待合室にはストーブや扇風機、テレビなどが設置され、男女別の水洗トイレも完備。自動券売機による乗車券販売も行っていました。駅事務室には神岡鉄道の運輸課が置かれ、記念乗車券や定期券なども販売していました。また、ホーム上には大黒天を祀った祠が置かれるなど、独特の雰囲気も漂っていました。

貨物輸送：神岡鉱山の産業を支える役割

神岡鉱山前駅は、神岡鉄道において唯一の貨物取扱駅でした。神岡鉱業（三井金属鉱業の子会社）への専用線が敷設されており、濃硫酸や地金、原料などの輸送が行われていました。私有貨車を用いた輸送が中心でしたが、老朽化に伴い、2004年までに鉄道による貨物輸送は終了しました。廃線後は、専用線も撤去されました。

駅周辺：神岡鉱山への玄関口

神岡鉱山前駅は、神岡市街地の入口付近に位置していました。駅周辺には、国道41号と国道471号の分岐点があり、国道471号は神岡鉱山へと続いていました。北陸電力の東町発電所なども近くにある、工業地帯のような雰囲気でした。

現在：観光軌道自転車の拠点として

神岡線の廃線後、神岡鉱山前駅は、新たな役割を担っています。現在では、観光用軌道自転車「レールマウンテンバイク」の折り返し地点として利用されています。駅構内の広さを生かし、軌道自転車の方向転換作業が行われています。また、旧車庫には、かつて運行されていた気動車やディーゼル機関車が保存されています。

神岡鉱山前駅は、その歴史と現在が混在する、独特の雰囲気を持つ場所となっています。かつては山岳地帯の交通と産業を支えていた駅が、今では観光客に新たな魅力を提供しているのです。

アクセス

濃飛バス「神岡鉱山口」バス停からアクセス可能。
割石温泉、栃尾温泉、平湯温泉、新穂高温泉など周辺の温泉地へのアクセスも良好です。

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