名鉄3500系電車 (初代)

名鉄3500系電車の概要

名鉄3500系電車は、名古屋鉄道（名鉄）が1942年から1943年にかけて導入した電車です。この電車は名鉄の直流1,500 V電化路線で運用される吊り掛け駆動車の一つで、間接自動進段制御器を搭載したAL車に属します。この3500系には、制御電動車モ3500形のほか、同じ設計から派生した知多鉄道のク950形電車や、制御車化改造を受けたク2650形電車、そして事故を通じて新製されたモ3560形電車も含まれます。

導入経緯

3500系の導入は、旧愛知電気鉄道に由来する架線電圧1,500 Vの東部線向け車両としての計画から始まりました。その設計はモ3350形（初代）・ク2050形を踏襲しつつ、西部線向けに制御電動車モ3500形および制御車ク2500形を1940年10月に設計認可を受けました。しかし、太平洋戦争の影響で資材が不足する中、設計変更が行われ、最終的には3扉ロングシート仕様となって1942年に11両が新製されました。

本来予定されていたモ3500形は、電装品の調達が難しく、暫定的に制御車としての役割を果たしました。ク2500形は長距離運用を考慮し、便所を設置した点が特徴です。

車体の特徴

3500系の電車は、半鋼製の車体を持ち、全長は17,600 mm、幅は2,700 mmです。窓のデザインや側面の開閉可能窓は先代モデルを踏襲しつつ、3扉設計のために各部の寸法も改訂されました。もう一つ注目すべきは、便所と洗面所を設けたク2500形のデザインです。

前面形状は円弧を描く丸妻形状で、貫通構造が採用されています。運転台構造においても、両運転台のモ3500形と片運転台のク2500形とでは形状に違いがあります。

主要機器

3500系は、初期計画段階で主電動機などの仕様がモ800形に準じている予定でしたが、軌道上の仕様変更に伴い、主要機器が変更されました。主電動機は、定格出力110 kW級のTDK-550系直流直巻電動機を4基搭載しており、制動装置にはAMA/ACA自動空気ブレーキが採用されています。

運用状況

3500系の運用は太平洋戦争前後を通じて行われました。初期のモ3500形は西部線に配属され、東部線でも使用されました。戦後、モ3500形は改造を受け、電動車化されることでその役割が変化しました。特に1946年には、ク950形の電動車化改造が行われ、さらに改番が実施されました。

戦後の改造と廃車

1951年からは車両の2扉化改造が施され、設備の改善や車両の運用効率が高められました。また、1952年以降には元モ950形車両が電装解除され、さらに各車両の編成替えも行われました。

1980年代には新型車両の導入が進み、3500系は徐々に淘汰されていきました。最終的には1996年に最後のモ812が運用を離脱し、名鉄3500系は全て廃車となりました。

終わりに

名鉄3500系電車は、名古屋鉄道の歴史において重要な役割を果たしました。その設計変更や運用の多様性は、鉄道車両がどのように時代に依存し、進化していくかの一例と言えます。その痕跡は、名鉄の歴史に深く刻まれています。

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