咸北線

咸北線(ハンブクせん)



咸北線は、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の咸鏡北道を走る鉄道路線です。清津市青岩区域の青岩駅から、中国との国境沿いを南下し、羅先特別市の羅津駅までを結びます。北朝鮮の北東部を大きく迂回する形で、全長は平羅線の約3.8倍にも及びます。

概要



咸北線の原型は、日本統治時代に建設された咸鏡線、南満洲鉄道北鮮西部線、北鮮東部線、雄羅線です。具体的には、以下の区間に対応します。

青岩 - 三峰:咸鏡線の一部
三峰 - 南陽:南満洲鉄道北鮮西部線
南陽 - 先鋒:南満洲鉄道北鮮東部線
先鋒 - 羅津:南満洲鉄道雄羅線

路線の形成は複雑で、まず1916年に咸鏡線の延伸として清津 - 蒼坪間が開業しました。その後、軽便鉄道会社が会寧から上三峰・潼関までを建設し、1927年には豆満江梁が完成、満洲中国東北部)との連絡鉄道となりました。しかし、軌間の違いから直通運転はできませんでした。

1929年朝鮮総督府鉄道局が図們鉄道を買収し、会寧 - 潼関間を図們西部線としました。同時に、雄基(現:羅先)を起点とし潼関に至る図們東部線の整備も進められ、1933年に全通、日本と満洲東部を結ぶ短絡ルートとなりました。同年、満洲国の首都新京(現:長春)から図們(南陽の対岸)を結ぶ京図線が開業し、雄基 - 新京を結ぶ鉄道線が完成しました。

1934年、清津 - 雄基間の運営は南満洲鉄道に移管され、1935年には羅津港が整備され、北鮮鉄道も雄基 - 羅津間が延伸されました。これらの港へは日本各地からの連絡船が運航され、満鉄は羅津 - 新京間の急行列車「あさひ」を運行しました。

1940年、清津 - 上三峰間は再び朝鮮総督府鉄道局に移管され、咸鏡線となりました。京城(現:ソウル)から牡丹江を結ぶ急行列車も運行され、最盛期を迎えました。

太平洋戦争末期にはソ連軍の攻撃により一部運休となりました。終戦後、朝鮮半島北部にはソ連軍が進駐し、復興は遅れました。さらに朝鮮戦争による破壊も加わりました。

戦後、中国とソ連の支援により、咸北線は優先的に復興されました。1959年には豆満江に親善が開通、羅津 - 洪儀間はソ連(現:ロシア)への重要ルートとなりました。

歴史



1916年11月5日:清津 - 蒼坪間開通
1917年9月16日:蒼坪 - 豊山間開通
1917年11月25日:豊山 - 会寧間開通
1920年1月5日:会寧 - 上三峰間開通
1922年12月1日:上三峰 - 鍾城間開通
1924年11月1日:鍾城 - 潼関鎮間開通
1929年4月1日:図們鉄道を買収、会寧 - 潼関鎮間が図們西部線に
1929年11月16日:雄基 - 新阿山間開通
1930年10月1日:新阿山 - 訓戎間開通
1931年10月20日:訓戎 - 穏城間開通
1932年11月1日:穏城 - 豊利間開通、新会寧駅廃止、会寧 - 上三峰間を標準軌
1932年12月1日:豊利 - 南陽間開通
1933年8月1日:上三峰 - 潼関鎮間を標準軌化、南陽 - 潼関鎮間が開業、下三峰駅廃止、潼関鎮駅が潼関駅に改称
1933年10月1日:輸城 - 雄基間が南満洲鉄道委託管理
1934年11月1日:清津 - 南陽間を北鮮西部線、南陽 - 雄基間を北鮮東部線に改称
1935年11月1日:羅津港の整備により雄基 - 羅津間が開通、雄羅線となる
1936年:羅津 - 新京間で急行列車「あさひ号」運行開始
1940年10月1日:清津 - 上三峰間が朝鮮総督府鉄道局に経営移管、咸鏡線となる
1941年12月10日:東雄基駅開業
1942年2月1日:清津駅付近の線路移設
1942年2月16日:大徳駅開業
1944年10月1日:嘯岩駅廃止
1945年4月1日:上三峰 - 雄基間が朝鮮総督府鉄道から南満洲鉄道株式会社に所有権移転
1959年:ソ連の援助により朝鮮・ロシア友情が開通
2008年ロシア鉄道ハサン駅 - 羅津駅間に四線軌条化工事開始
2013年9月22日:洪儀駅 - 羅津駅間の四線軌条化工事完成

運行概要



2002年現在、上三峰と中国国鉄開山屯を結ぶレールは撤去され、南陽と図們の間も貨物列車のみの運行です。羅津 - 洪儀間はシベリア鉄道と接続する重要ルートであり、平壌からモスクワへ向かう直通列車も経由します。江原線の葛麻駅を起点とし、咸北線の全区間を走破して羅津に至る列車も設定されていました。

ロシア鉄道との接続のため、ハサンから羅津までの区間は、標準軌広軌の四線軌条化工事が行われました。2013年に完成し、石炭輸送等の直通運転が開始される予定でしたが、2020年には新型コロナウイルスの影響で国際列車が運行停止となりました。

駅一覧



※清津青年駅 - 青岩駅間は平羅線ですが、全列車が清津青年駅まで乗り入れます。

廃止された支線



南羅津支線:羅津駅 - 南羅津駅

廃駅



新会寧駅:会寧青年駅と金生駅の間
下三峰駅:三峰駅と鍾城駅の間
嘯岩駅:鍾城駅と江岸里駅の間

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