哀宗 (金)

哀宗（あいそう）：金朝滅亡に抗い続けた最後の皇帝

哀宗は、金朝の第9代皇帝として、激動の時代に翻弄されながらも金朝の存続に尽力しました。女真名は寧甲速（ニンキャス）、漢名は守緒（しゅしょ）といい、「緒」の文字には皇室を守るという意味が込められていました。

生涯

宣宗の三男として生まれた哀宗は、兄の早世により皇太子となり、1224年に皇帝に即位しました。しかし、即位当時、金はモンゴル帝国の侵攻により領土の北半分を奪われ、首都も開封府へと移転せざるを得ない状況でした。

哀宗は、モンゴルの圧迫を受けていた西夏との同盟に活路を見出そうとしましたが、1227年に西夏が滅亡。金は再びモンゴル軍の標的となりました。そのような中、哀宗は獄に繋がれていた完顔陳和尚を釈放し軍務に復帰させます。陳和尚の活躍により一時的にモンゴル軍を撃破するも、1231年には金軍の拠点であった河中府が陥落、1232年には首都開封府がモンゴル軍に包囲されるという危機的状況に陥りました（開封攻囲戦）。

1232年の三峰山の戦いでは、完顔陳和尚が戦死。この戦いでモンゴル帝国が大勝し、金朝の衰退が決定的となりました。金側はモンゴル軍に和議を申し込むも、弟を金との戦闘で失ったモンゴル帝国のオゴデイ・カアンは、哀宗を仇敵として交渉を拒否しました。

追い詰められた哀宗は、1233年に開封府を脱出し、帰徳府、亳州、蔡州へと逃亡。しかし、モンゴル軍の追撃は厳しく、1234年には蔡州城がモンゴル軍と南宋軍によって完全に包囲されました（蔡州の戦い）。絶望的な状況の中、哀宗は軍の統帥であった完顔氏傍流の呼敦（末帝）に皇位を譲り、自らは城中の幽蘭軒で縊死しました。

哀宗の死からわずか半日後、モンゴル・南宋連合軍の攻撃により蔡州城の金軍は全滅し、金朝は滅亡しました。哀宗の生涯は、金朝が滅亡に向かう中で、最後まで抵抗を続けた皇帝の姿を象徴しています。

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