唐朝銭

唐朝銭：唐代の通貨とその歴史

唐朝銭（とうちょうせん）は、中国の唐王朝時代に広く流通した貨幣の総称です。しばしば「唐銭」とも呼ばれますが、この用語は日本に渡来した銭貨（渡来銭）を指す場合もあり、区別が必要です。本記事では、唐朝銭に焦点を当て、その歴史的背景と種類について詳しく解説します。

唐朝銭の概要

唐代初期には、隋王朝で使用されていた五銖銭が引き続き流通していました。しかし、621年に唐は新たな貨幣制度を導入し、五銖銭を廃止して「開元通宝」を発行しました。開元通宝は、直径約8分（約24mm）、重さ0.1両（約3.7g）を基準とし、従来の単位で2銖4絫に相当しました。この時、「銭」という新しい単位が導入され、開元通宝は長きにわたり中国の貨幣の標準となりました。

開元通宝は、その銘を持つ貨幣が唐代を通じてほぼ継続的に発行され、その影響は後世にまで及んでいます。五代十国時代や太平天国においても、開元通宝を模倣した貨幣が発行されました。これは、開元通宝が持つ普遍的な価値と信頼性の証と言えるでしょう。

唐朝銭の種類

唐代には、開元通宝以外にも様々な種類の銭貨が発行されました。以下に主なものを挙げます。

開元通宝: 唐代を代表する最も基本的な貨幣です。唐代を通じて広く流通し、後世の貨幣制度にも影響を与えました。
乾封泉宝: 666年に発行された銭貨です。開元通宝の次に発行された銭貨として知られています。
乾元重宝: 759年に発行された銭貨で、開元通宝の次に重要な貨幣です。この頃から、貨幣の価値が変化し始めました。
大暦元宝: 代宗帝（762年 - 779年）の時代に発行された銭貨です。
建中通宝: 徳宗帝（779年 - 805年）の時代に発行された銭貨です。これらの銭貨は、開元通宝と比較すると発行量が少なく、珍重される傾向があります。
元字銭・中字銭: 大暦元宝と建中通宝の省略形として発行された銭貨で、それぞれ「元」と「中」の字のみが刻まれています。これは、銭貨発行の簡略化を示すものと考えられます。
得一元宝・順天元宝: 乾元年間（758年 - 760年）に、史思明によって発行された銭貨です。これらは、当時の政治的な混乱を反映した貨幣と言えるでしょう。

渡来銭としての唐朝銭

唐朝銭の中でも、特に開元通宝と乾元重宝は日本にも多く渡来しました。これらの貨幣は、日本の古代社会において、通貨としての役割を果たしただけでなく、文化交流の証ともなっています。これらの貨幣は、遺跡からの出土例も多く、その歴史的価値を物語っています。

まとめ

唐朝銭は、唐代の経済活動を支えた重要な要素であり、その種類は多岐にわたります。特に開元通宝は、その後の中国の貨幣制度に大きな影響を与えました。また、唐朝銭は渡来銭として日本にも渡り、古代社会に大きな影響を与えました。これらの貨幣を通して、唐代の文化や歴史を垣間見ることができるでしょう。

参考文献

郡司勇夫 編『日本貨幣図鑑』東洋経済新報社、1981年10月15日。
『縮刷東洋歴史大辞典』 中巻、下中彌三郎(編輯)、臨川書店、1986年10月25日。
日本貨幣商協同組合 編『日本貨幣カタログ2010年版』日本貨幣商協同組合、2009年12月1日。

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