四季彩

四季彩（しきさい）

四季彩は、東日本旅客鉄道（JR東日本）が2001年から2009年にかけて運行していた観光・イベント向け車両、いわゆるジョイフルトレインの一つです。主に青梅線沿線の魅力を発信することを目的に誕生しました。

誕生と改造

この車両は、豊田電車区（現在の豊田車両センター）で訓練用に使われていた201系通勤電車1編成（4両編成）を改造して誕生しました。具体的には、クハ201-134、モハ201-263、モハ200-263、クハ200-134の4両が種車となりました。改造工事は2001年に行われ、同年8月4日に営業運転を開始。「展望電車」として走り始めました。その後、愛称が公募され、同年11月23日に「四季彩」と名付けられました。

改造にあたっては、青梅線沿線の風光明媚な景色をより楽しめるよう、様々な工夫が凝らされました。特に注目すべきは、多摩川側の側面窓が、それまでの二段窓から固定式の大きな一枚窓に変更されたことです。これにより、車窓からの眺めが格段に向上しました。座席配置も特徴的で、奥多摩寄りの先頭車（クハ200-134）は、全ての座席が多摩川（進行方向左側）を向くように配置されました。他の3両も、多摩川側にクロスシートが設置されました。また、景色を見ながら飲食などができるよう、テーブルを兼ねた荷物置台も設置されました。

彩り豊かなデザイン

「四季彩」の名の通り、その外観デザインは季節をテーマにした彩り豊かなものでした。運転開始当初の旧塗色では、車両ごとに異なる季節が表現されました。

奥多摩方先頭車（クハ200-134）は春をイメージし、アイスグリーンを基調に緑系の帯と桜が描かれました。
モハ200-263は夏を表し、水色を基調に青・青緑系の帯とひまわり（2004年7月以降は奥多摩に自生するレンゲショウマに変更）が描かれました。
モハ201-263は秋を表現し、ベージュを基調に茶・橙系の帯と紅葉が描かれました。
立川方先頭車（クハ201-134）は冬をイメージし、すみれ色を基調に灰色・紺系の帯と雪の結晶が描かれました。

2005年5月に旧塗色での運転を終え、同年6月にリニューアル後の新塗色がお披露目されました。新塗色では編成全体でデザインが統一され、白色をベースに車体下半分に多摩川の流れを表現した青いラインが描かれました。また、季節のテーマは各車両の配置が逆転し、描かれる絵柄も青梅線沿線の具体的な名所や特産品に変更されました。

奥多摩方先頭車（クハ200-134）は冬となり、奥多摩湖とゆずが描かれました。
モハ200-263は秋となり、鳩ノ巣渓谷と紅葉が描かれました。
モハ201-263は夏となり、御岳山とレンゲショウマが描かれました。
立川方先頭車（クハ201-134）は春となり、吉野梅郷と梅が描かれました。

活躍と引退

四季彩は2001年8月の運転開始後、主に土休日を中心に青梅線の立川～奥多摩間、五日市線の拝島～武蔵五日市間で定期列車として運行されました。しかし、同年12月のダイヤ改正以降は、五日市線での定期運用はなくなり、青梅線での運行が中心となりました。

青梅線での定期運用の傍ら、臨時列車としても各地で活躍しました。2002年からは南武線を経由して川崎と奥多摩を結ぶ臨時列車「川崎-奥多摩ハイキング号」として運転を開始しました。2003年には中央本線で「やまなし四季彩号」として運転された実績もあります。また、2004年には小淵沢～白馬間で臨時快速「四季彩高原号」としても運転され、改造された通勤型車両ながら全車指定席とする珍しい運用も行われました。2007年には富士急行線へ乗り入れ「四季彩河口湖号」として、また大宮から奥多摩を結ぶ「むさしの奥多摩号」としても運行されました。2008年には篠ノ井線長野～姨捨間でも「姨捨フォトトレイン四季彩号」として運転されるなど、その活躍範囲は青梅線を超えて広がりを見せました。

登場以来、青梅線沿線の活性化や観光PRに貢献してきた四季彩でしたが、2009年6月11日に引退が発表されました。同年6月28日の運転をもって定期運用を終了し、通常デザインのヘッドマークでの運行もこの日が最後となりました。長年の活躍に終止符を打つにあたり、7月には数日間にわたって区間を変えながら「さよなら運転」が実施されました。このさよなら運転では、特別なデザインのヘッドマークが掲出されました。そして、2009年7月20日の運転を最後に、四季彩はその役目を終え引退しました。引退から3日後の7月23日には、廃車のため長野総合車両センターへ回送されました。

青梅線の自然に溶け込むような彩り豊かな姿で親しまれた四季彩は、多くの人々の記憶に残る車両となりました。

もう一度検索