囲碁発陽論

『囲碁発陽論』（いごはつようろん）は、江戸時代中期の1713年（正徳3年）に、当時の名人碁所であった四世井上因碩（道節）によって完成された囲碁の棋書です。その難解さから「不断桜」という別名でも呼ばれ、「発陽論」と表記されることもあります。

成立の経緯

井上因碩は『囲碁発陽論』を完成後、井上家門外不出の書として秘蔵し、門下生であっても容易に見ることができませんでした。因碩の死後もその内容は秘匿されていましたが、井上家の火災によって原本が焼失してしまいます。しかし、本因坊烈元の門下であった伊藤子元が入手していた写本が人づてに伝わり、1906年に安藤如意が伊藤松和の門人からその存在を聞きつけ、山崎外三郎の未亡人から筆写の許可を得ました。これを入手した本因坊秀哉が、15世井上因碩所蔵の写本と合わせ、時事新報に掲載。1904年には秀哉と因碩による解説とともに『囲碁珍朧発陽論』として出版されました。現在でも写本が古書として残存しています。

内容の特徴

『囲碁発陽論』は、死活問題（詰碁）、攻め合いの問題、シチョウ問題、盤中詰碁など、多岐にわたる内容で構成されています。原本では183題、異本を含めると202題の問題が収録されています。一般的な詰碁は隅や辺に限定された形が多いのに対し、『発陽論』では中央での攻防が多く、石のない場所まで深く読み進めなければならない難問が多いのが特徴です。その難解さから、現在でもプロ棋士を目指す者にとって、必読の書とされています。

主な出版物

本因坊秀哉、十五世井上因碩編『囲碁珍瓏発陽論』大野万歳館 1904年
橋本昌二『名作詰碁辞典 玄玄碁経と発陽論』誠文堂新光社 1976年
橋本宇太郎編『発陽論—死活の秘伝』山海堂 1980年（改訂版 2004年）
「活之部」34題、「死之部」49題、「劫之部」61題の詰碁、「勝之部」47題の攻め合いの問題、「征之部」5題のシチョウ問題、「雑之部」6題、合計202題を収録。
藤沢秀行編『囲碁発陽論』平凡社（東洋文庫） 1982年
高木祥一編『囲碁発陽論』教育社 1990年

外部リンク

* 『囲碁珍瓏発陽論』 - 国立国会図書館デジタルコレクション

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