国家海洋局

国家海洋局：中国の海洋管理を担った機関

国家海洋局（State Oceanic Administration）は、かつて中華人民共和国に存在した国家行政機関であり、国土資源部の管理下に置かれていました。海洋調査、環境保護、領海警備など、多岐にわたる業務を担っていましたが、2018年の組織再編により自然資源部に統合され、その歴史を終えました。本記事では、国家海洋局の設立から廃止までの経緯、主な任務、組織構成について詳しく解説します。

沿革

海洋局創設前の沿岸・海洋管理組織

国家海洋局が設立される以前、中国では以下のような組織が海洋管理に関わっていました。

1956年：科学規劃委員会（現在の科学技術部）
沿岸・海洋管理を担当する部所として、内部部局に海洋組が組織されました。海洋組は、物理、深海遠洋、水文気象、化学、生物、地質地形、観測機器の7つの専門小組で構成されていました。
1958年：科学技術委員会
科学規劃委員会が国家技術委員会と合併し、科学技術委員会となりました。海洋組は引き続き同委員会の内部部局として存続し、渤海、黄海、東シナ海、南シナ海での海洋調査を開始しました。しかし、当時は調査船を自前で保有しておらず、人民解放軍海軍が調査の実務を担当していました。また、調査は不定期で、装備も不足していたため、継続的なモニタリングには程遠い状況でした。
1959年：山東海洋学院（現在の中国海洋大学青島校）
山東大学、厦門大学、復旦大学の海洋系研究機関を統合して設立されました。
その他
中国科学院傘下の海洋研究所（青島）と南海研究所（広州）、人民解放軍海軍司令部航海保障部の海洋研究所（海軍第4研究所）が設立されました。

国家海洋局の設立

1964年7月22日：国家海洋局設立
国務院直属の沿岸・海洋管理機構として、国家海洋局が設立されました。機構序列は副部長級でした。設立に伴い、海軍の海洋研究所、海洋調査大隊、科学技術委員会の海洋組弁公室が国家海洋局に移管されました。
1965年：3つの分局設立
北海分局（青島）、東海分局（寧波、後に上海）、南海分局（広州）が設立され、海洋調査船による海洋測量、地球物理学的調査、観測ステーションによる潮汐、波高、気象観測などの活動が活発化しました。
文化大革命期
文化大革命の影響はほとんど受けず、むしろ観測船や海軍からの転籍船が増強されるなど、組織は拡大しました。

国連海洋法条約批准と任務の拡大

1983年3月1日：「海洋環境保護法」施行
海洋環境の調査・モニタリング、環境管理、海洋パトロール船による監視・取り締まりが国家海洋局の新たな職責として追加されました。
1996年：国連海洋法条約批准
中国は自国の排他的経済水域を設定し、その海域の資源に対する主権的権利を主張するようになりました。
1998年3月：国土資源部管理下へ
国務院直属から国土資源部が管理する国家局となりました。同時に、「中国海監総隊」が発足し、「海洋権益の維護」が国家海洋局の職責に加えられました。
2002年1月1日：「海域使用管理法」施行
中国の主張する海域（内水、領海）は国家が所有し、海域使用希望者に海域使用権を与え、使用料を徴収することになりました。海域使用権は売買、入札、抵当が可能となりました。
2008年：「維権巡航」の実施
中国の主張する管轄海域（領海、排他的経済水域、大陸棚）で行うパトロール活動が具体的に明記されました。
2010年3月1日：「海島保護法」施行
重要な島嶼は保護し、無人島は国家の所有とし、使用希望者に島の使用権を与え使用料を徴収することになりました。
2013年3月：中国海警局の設立
国家海洋局の中国海監、公安部の辺防海警、農業部の中国漁政、海関総署の海上緝私警察の船隊とその職責が、国家海洋局内に新たに設立された中国海警局に統合されました。中国海警局は公安部の指導を受け、海洋権益を維持し法を執行する活動を展開しました。

国家海洋局の廃止

2018年3月：自然資源部へ統合
国務院改革により、国土資源部、国家測量地理情報局と統合され、自然資源部が新設されました。これに伴い、国家海洋局は廃止されました。

主要任務

国家海洋局は、以下の主要な任務を担っていました。

海洋関係法規・計画の起草
管轄海域における海洋権益維持のための法執行
海域使用管理
海島保護
海洋生態環境保護
海洋観測・予報及び災害警報
海洋関係の技術革新
海洋経済活動の監視
海洋に係る国際交流・協力
国家海洋委員会の業務

組織

国家海洋局は、以下の組織で構成されていました。

本局
弁公室
戦略計画及び経済司
政策法制及び島嶼権益司
海警司（海警司令部、中国海警指揮センター）
生態環境保護司
海域総合管理司
予報減災司
科学技術司
国際協力司（香港・澳門・台湾弁公室）
人事司（海警政治部）
財務装備司（海警後方勤務装備部）
国家海洋局党委員会
規律委員会・監察局
離退休幹部局
局属単位

役職

局長（副部長級）、党組書記兼中国海警局政治委員：王宏
副局長、党組副書記兼中国海警局局長、公安部副部長兼党委員会委員（正部長級）：不明
* 副局長、党組構成員：孫書賢、石青峰、林山青

まとめ

国家海洋局は、設立から廃止まで、中国の海洋管理において重要な役割を果たしました。海洋調査、環境保護、領海警備など幅広い業務を担い、中国の海洋政策の発展に大きく貢献しました。その歴史は、中国の海洋に対する関心の高まりと、国際的な海洋秩序への積極的な関与を示すものと言えるでしょう。

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