国王牧歌
アルフレッド・テニスン卿が著した『国王牧歌 (Idylls of the King)』は、アーサー王伝説を題材とした12篇からなる壮大な叙事詩です。1856年から1885年にかけて発表され、アルバート公に献呈されました。
テニスンは、トマス・マロリーの『アーサー王の死』や『マビノギオン』といった既存のアーサー王伝説を基盤としながらも、独自の解釈や脚色を加えることで、作品に新たな深みを与えています。特に、グィネヴィアの物語における改変は顕著です。マロリー版では火刑を免れたグィネヴィアですが、テニソンの作品では修道院に身を寄せ、悔い改めた後にアーサー王から許され、余生を修道院で送ることになります。
さらに、テニスンは登場人物の名前の綴りを韻律に合わせて変更するなど、細部にわたる工夫を凝らしています。詩全体を通して、主にブランクヴァースという形式が用いられています。ブランクヴァースとは、五歩格の無韻詩のことを指します。
『国王牧歌』は、最初から完全な形で発表されたわけではありません。1859年には「エニード」、「ヴィヴィアン」、「エレイン」、「グィネヴィア」の4篇が最初に発表され、その後、徐々に他の篇が追加されていきました。「エニード」は後に「ゲランドの結婚」と「ゲラントとエニード」に分割され、「グィネヴィア」も加筆修正されました。「聖杯」などの篇が発表されたのは、最初の発表から10年後です。「最後のトーナメント」は1871年、「ガレスとリネット」がその後発表され、最後の篇である「ベイリンとベイラン」は1885年に発表されました。アルバート公の死後、翌年には献辞が追加され、エピローグである「王妃へ」も1873年に発表されています。
各篇はそれぞれ独立した物語でありながら、全体としてアーサー王の栄光と悲劇、円卓の騎士たちの運命を描き出しています。以下に、いくつかの主要な篇のあらすじを簡単に紹介します。
The Coming of Arthur (アーサー王の到来): アーサー王の即位とグィネヴィアとの結婚を描いています。カメリアド王はアーサーの身分に疑念を抱きながらも、最終的には結婚を承諾します。
Gareth and Lynette (ガレスとリネット): ガレス卿の冒険物語です。身分を隠し、台所仕事をすることで騎士となることを許されたガレスは、数々の困難を乗り越え、乙女を救います。テニスン版では、原作と異なる恋人が登場します。
The Marriage of Geraint (ゲライントの結婚)、Geraint and Enid (ゲライントとエニード): ゲライントとエニードの夫婦間の葛藤を描いています。疑心暗鬼に陥ったゲライントと、それを試すように行動するエニードの物語は、夫婦間の信頼と愛情の難しさを浮き彫りにします。
Balin and Balan (ベイリンとベイラン): ベイリン卿の悲劇的な物語です。粗野な性格のベイリンは、ランスロットを尊敬するものの、王妃の不貞を知り、宮廷を去ります。聖なる槍を手に入れた彼は、策略によって弟のベイランと戦うことになります。
Merlin and Vivien (マーリンとヴィヴィアン): 魔法使いマーリンとヴィヴィアンの物語。ヴィヴィアンはマーリンを騙し、オークの木の中に閉じ込めてしまいます。
Lancelot and Elaine (ランスロットとエレイン): ランスロット卿とエレインの悲恋物語。ランスロットはグィネヴィアの愛に盲目であり、エレインの片思いは報われません。
The Holy Grail (聖杯): 円卓の騎士たちが聖杯を求めて冒険する物語です。パーシヴァルを主人公に、聖杯探求の旅の厳しさと、騎士団の衰退が描かれています。
Pelleas and Ettare (ペレアスとエタール): ペレアス卿とエタールの恋物語です。ペレアスの一途な愛は、エタールに届かず、ガウェインの裏切りによってさらに悲劇的な結末を迎えます。
The Last Tournament (最後のトーナメント): トーナメントを巡る物語で、トリストラムの死が描かれています。
Guinevere (グィネヴィア): ランスロットとの不倫が発覚したグィネヴィアが、アーサー王に許され、修道院で余生を送る物語です。
* The Passing of Arthur (アーサー王の死): モードレッドとの最終決戦とアーサー王の死を描いています。ベディヴィアだけが生き残り、アーサー王はアヴァロンへと旅立ちます。
『国王牧歌』は、アーサー王伝説を新たな視点で捉え直し、美しくも悲劇的な物語を紡ぎ出した傑作です。テニソンの洗練された詩と、登場人物たちの複雑な感情が、読者に深い感動を与え続けています。日本語訳としては、清水阿や訳『王の物語』(ドルフィンプレス)などが存在します。
テニスンは、トマス・マロリーの『アーサー王の死』や『マビノギオン』といった既存のアーサー王伝説を基盤としながらも、独自の解釈や脚色を加えることで、作品に新たな深みを与えています。特に、グィネヴィアの物語における改変は顕著です。マロリー版では火刑を免れたグィネヴィアですが、テニソンの作品では修道院に身を寄せ、悔い改めた後にアーサー王から許され、余生を修道院で送ることになります。
さらに、テニスンは登場人物の名前の綴りを韻律に合わせて変更するなど、細部にわたる工夫を凝らしています。詩全体を通して、主にブランクヴァースという形式が用いられています。ブランクヴァースとは、五歩格の無韻詩のことを指します。
『国王牧歌』は、最初から完全な形で発表されたわけではありません。1859年には「エニード」、「ヴィヴィアン」、「エレイン」、「グィネヴィア」の4篇が最初に発表され、その後、徐々に他の篇が追加されていきました。「エニード」は後に「ゲランドの結婚」と「ゲラントとエニード」に分割され、「グィネヴィア」も加筆修正されました。「聖杯」などの篇が発表されたのは、最初の発表から10年後です。「最後のトーナメント」は1871年、「ガレスとリネット」がその後発表され、最後の篇である「ベイリンとベイラン」は1885年に発表されました。アルバート公の死後、翌年には献辞が追加され、エピローグである「王妃へ」も1873年に発表されています。
各篇はそれぞれ独立した物語でありながら、全体としてアーサー王の栄光と悲劇、円卓の騎士たちの運命を描き出しています。以下に、いくつかの主要な篇のあらすじを簡単に紹介します。
The Coming of Arthur (アーサー王の到来): アーサー王の即位とグィネヴィアとの結婚を描いています。カメリアド王はアーサーの身分に疑念を抱きながらも、最終的には結婚を承諾します。
Gareth and Lynette (ガレスとリネット): ガレス卿の冒険物語です。身分を隠し、台所仕事をすることで騎士となることを許されたガレスは、数々の困難を乗り越え、乙女を救います。テニスン版では、原作と異なる恋人が登場します。
The Marriage of Geraint (ゲライントの結婚)、Geraint and Enid (ゲライントとエニード): ゲライントとエニードの夫婦間の葛藤を描いています。疑心暗鬼に陥ったゲライントと、それを試すように行動するエニードの物語は、夫婦間の信頼と愛情の難しさを浮き彫りにします。
Balin and Balan (ベイリンとベイラン): ベイリン卿の悲劇的な物語です。粗野な性格のベイリンは、ランスロットを尊敬するものの、王妃の不貞を知り、宮廷を去ります。聖なる槍を手に入れた彼は、策略によって弟のベイランと戦うことになります。
Merlin and Vivien (マーリンとヴィヴィアン): 魔法使いマーリンとヴィヴィアンの物語。ヴィヴィアンはマーリンを騙し、オークの木の中に閉じ込めてしまいます。
Lancelot and Elaine (ランスロットとエレイン): ランスロット卿とエレインの悲恋物語。ランスロットはグィネヴィアの愛に盲目であり、エレインの片思いは報われません。
The Holy Grail (聖杯): 円卓の騎士たちが聖杯を求めて冒険する物語です。パーシヴァルを主人公に、聖杯探求の旅の厳しさと、騎士団の衰退が描かれています。
Pelleas and Ettare (ペレアスとエタール): ペレアス卿とエタールの恋物語です。ペレアスの一途な愛は、エタールに届かず、ガウェインの裏切りによってさらに悲劇的な結末を迎えます。
The Last Tournament (最後のトーナメント): トーナメントを巡る物語で、トリストラムの死が描かれています。
Guinevere (グィネヴィア): ランスロットとの不倫が発覚したグィネヴィアが、アーサー王に許され、修道院で余生を送る物語です。
* The Passing of Arthur (アーサー王の死): モードレッドとの最終決戦とアーサー王の死を描いています。ベディヴィアだけが生き残り、アーサー王はアヴァロンへと旅立ちます。
『国王牧歌』は、アーサー王伝説を新たな視点で捉え直し、美しくも悲劇的な物語を紡ぎ出した傑作です。テニソンの洗練された詩と、登場人物たちの複雑な感情が、読者に深い感動を与え続けています。日本語訳としては、清水阿や訳『王の物語』(ドルフィンプレス)などが存在します。
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