国鉄クヤ7形電車

クヤ7形について

クヤ7形は、かつて日本国有鉄道（国鉄）で使用された事業用の直流電車で、特にそのユニークな歴史が注目されています。実はこの電車、元は無蓋貨車であるトキ10形を改造しており、非常に珍しい形式の電車ということができます。ここでは、クヤ7形の概要、構造、及び経歴について詳しく解説します。

概要

1952年、戦後の復興期において、荷重が比較的少ないヤサハ36形の代替として配給列車で使用されていたトキ10形無蓋貨車を、実際に配給電車としての機能を持つように本格的に改造したのがクヤ7形です。以前は、従来のヤサハ36形やトキ10形を電動車に挟んだ3両編成で運用されていましたが、この方式は効率が悪かったため、配給電車としての機能を強化するために制御車化が行われました。改造作業は大井工場と吹田工場において実施され、最終的には5両がクヤ7形として完成しました。

クヤ7形という名称は、実際には70kW（100PS）の電動機を搭載するべき電動車とつながるべき木製の付随車（制御車）に本来付与されるべき形式名でしたが、実態は半鋼製であり、従来の電車の系譜から外れていたため、国鉄が製作した特異な電車と言えます。その後、1953年6月1日には車両形式称号規程も改定され、雑形に分類されると共にクル9210形に改称されました。

形式番号の変遷は以下のようになっています：

• - トキ38 → クヤ7001 → クル9210
• - トキ47 → クヤ7002 → クル9211
• - トキ82 → クヤ7003 → クル9212
• - トキ87 → クヤ7004 → クル9213
• - トキ144 → クヤ7005 → クル9214

構造

クヤ7形の特徴的な点は、その車体構造にあります。車体の一端には切妻の運転台が設けられ、この部分だけが有蓋となっています。運転台は非常に狭く、乗務員用の扉の幅と同程度です。また、妻面は非貫通タイプであり、3枚の窓を持ち、ロクサン型のスタイルとよく似た表情を持っています。この運転台以外の部分は無蓋で、元々の木製のあおり戸は撤去され、固定式の側板に改造されています。このような構造から、クヤ7形は小型でありながら、元が貨車であったため、荷重は30tに達しています。

元のトキ10形の台車はアーチバー式のTR20であったのですが、電車へ改造する際にはワキ700形貨車に装備されていた高速用の鋳鋼製台車TR24に変更されています。

経歴

クヤ7形の登場後、最初の4両（クヤ7001 - クヤ7004）は東京鉄道管理局に配置され、残りの1両（クヤ7005）は大阪鉄道管理局に配置されました。これらは鋼製配給車や荷物車と組んで様々な運用に使用されました。しかし、1963年からは国鉄のクル29形への置き換えが進行し、最終的には1965年7月にクヤ7005が廃車され、この形式は消滅することとなります。

関連項目

クヤ7形は、日本の鉄道史におけるユニークな存在であったことから、以下のような他の形式と関連があります。さらには、

• - 国鉄クモル23形電車
• - 国鉄クモル24形電車
• - 国鉄クル29形電車

これらの形式も、日本の鉄道技術の変遷を示す重要な資料となっています。

もう一度検索