国鉄タキ50000形貨車

国鉄タキ50000形貨車

国鉄タキ50000形貨車は、1960年から日本国有鉄道（国鉄）で製造された、ガソリン専用の50トン積タンク貨車です。この貨車は、当時の経済成長に伴って増大する貨物輸送量に対応するために設計されました。ガソリン専用タンク車としては初めて50トンの荷重を実現したことが特徴です。この形式は、日本車輌製造を主なメーカーとして開発され、合計で129両が製造されましたが、実際には標準形式にはなり得ませんでした。

構造の概要

タキ50000形は、大型貨車として設計されただけあって、各部が大荷重に対応するよう工夫されています。そのタンクは直円柱形状ですが、中央部分の直径が両端よりも太く、いわゆる「魚腹形異径胴」と呼ばれる特異な形状を持っています。タンク体は台枠の中央部分に直接取り付けられ、構造的には軽量化されています。荷重や引張力は車体側面の側梁で受け止められ、衝撃を緩和するために連結器には大きな緩衝器が設置されています。

また、台車は日本車輌製造が独自に開発した三軸ボギー台車を使用しています。この台車はベッテンドルフ式二軸台車に一軸台車を連結させたもので、平軸受とコイルばねを採用し、走行特性向上のためにオイルダンパも装備されています。後にこの形式は国鉄形式TR92形に分類され、さらに後期の車両ではTR78形という標準化された仕様に移行しました。

タキ50000形の詳細

タキ50000形は1960年5月から1965年まで、計90両が製造されました。初期の製造は日本車輌製造が75両、三菱重工業が4両、帝國車輛工業が11両で、様々な所有者が存在しました。設計当初の台車や車体構造にはいくつかのバリエーションが見られ、時代とともに国鉄の主導で各部が変更されていきました。

タキ55000形は、タキ50000形と同時期に開発された石油類（ガソリンを除く）専用のタンク車で、1960年から1965年にかけて39両が製造されました。

運用の変遷

これらの貨車は、製油所や油槽所に近い大規模な駅間での運用に使われ、常備駅も石油関連の施設に集中していました。しかし、大荷重車の利用には限度があり、他の二軸ボギータンク車が大量に製作されるにつれて、その意義は徐々に薄れていきました。また、長大な車体は既存の荷役設備に適合しにくく、特異な構造のため保守も難しくなり、国鉄末期には淘汰の対象となりました。

1987年の国鉄分割民営化時には、タキ50000形52両、タキ55000形21両が日本貨物鉄道（JR貨物）に引き継がれましたが、その後の淘汰が進行し、タキ55000形は1990年に、タキ50000形は1993年までに全車が除籍となりました。

参考文献

• - 鉄道公報
• - 吉岡心平『プロフェッサー吉岡の私有貨車図鑑（復刻増補）』2008年、ネコ・パブリッシング刊
• - 『日本の貨車-技術発達史-』（貨車技術発達史編纂委員会編著、社団法人 日本鉄道車輌工業会刊、2008年）

関連項目

• - 国鉄の車両形式一覧

このように、国鉄タキ50000形貨車は、歴史的な輸送ニーズに応える形で設計された重要な貨車の一つです。

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