国鉄120形蒸気機関車

120形蒸気機関車：日本の鉄道黎明期を支えた貴重な機関車

120形蒸気機関車は、かつて日本国有鉄道の前身である鉄道院・鉄道省に在籍した蒸気機関車です。日本の鉄道開業当初に輸入され、その後の鉄道発展に大きく貢献しました。

導入の経緯

1874年（明治7年）、阪神間の鉄道開業に際して、イギリスから4両の蒸気機関車が輸入されました。製造は1873年（明治6年）、ロバート・スティーブンソン社(Robert Stephenson & Co.)によるもので、製造番号は2102から2105です。ロバート・スティーブンソン社製の蒸気機関車は、日本では本形式と台湾総督府鉄道に納入された鉄道作業局A8クラスと同形の2両のみであり、非常に希少な存在です。

本項では、1876年（明治9年）に輸入された同仕様のシャープ・スチュアート社(Sharp, Stewart & Co. Ltd.,)製の4両（1875年製、製造番号2480 - 2483。後の130形、140形）についても記述します。

構造

120形は、動輪直径1,295mm、車軸配置2-4-0(1B)の2気筒単式の飽和式タンク機関車です。弁装置はスティーブンソン式、安全弁はサルター式を採用し、蒸気ドームがボイラー上に設けられています。

運転台は、前面のみに風除けが設けられた開放的な構造で、屋根は後方にある2本の鋼管で支持されています。側水槽や炭庫などには沈み鋲が多用されており、平滑な表面が特徴的です。

1890年代の終わりごろには、新橋工場で改造が行われ、運転室には側方と後方にも風除けが設けられました。また、安全弁もラムズボトム式に変更され、蒸気ドームも前方に移設されています。一部の車両では、側水槽が前方に延長され、砂箱が作り替えられました。

120形主要諸元
1936年度版形式図による
全長: 8,179mm（1909年度版では7,702mm）
全高: 3,531mm
軌間: 1,067mm
車軸配置: 2-4-0(1B)
動輪直径: 1,346mm
弁装置: スティーブンソン式基本型
シリンダー（直径×行程）: 330mm×508mm
ボイラー圧力: 8.0kg/cm2
火格子面積: 0.93m2
全伝熱面積: 52.9m2
煙管蒸発伝熱面積: 47.7m2
火室蒸発伝熱面積: 5.2m2
ボイラー水容量: 1.6m3
小煙管（直径×長サ×数）: 45mm×2,921mm×130本
機関車運転整備重量: 23.37t
機関車空車重量: 18.66t
機関車動輪上重量（運転整備時）: 17.78t
機関車動輪軸重（第1動輪上）: 9.14t
水タンク容量: 2.3m3
燃料積載量: 0.85t
シリンダ引張力: 2,790kg
ブレーキ装置: 手ブレーキ

130形・140形

130形・140形は、主要寸法は120形（スティーブンソン製）と同一ですが、通常の鋲（リベット）によって組み立てられているため、側水槽などに鋲頭が目立つ点が異なります。

2両は1882年（明治15年）に日本鉄道に譲渡されましたが、官設鉄道に残った2両（後の130形）はスティーブンソン製よりもやや遅れて改装が施されました。日本鉄道に譲渡された2両（後の140形）は、買収まで原型に近い形態を保っていました。

運転・経歴

1874年に来着したスティーブンソン製の4両は、西部地区（神戸）に配属されました。当初はシャープ・スチュアート製テンダー機関車（後の5000形）の続番である「13 - 16」と付番されたと思われますが、それを証明する資料は発見されていません。

1875年には、シャープ・スチュアート製の増備車4両が来着し、「24 - 27」と付番されたと思われます。

1876年（明治9年）には、東部（京浜間）の機関車を奇数に、西部（阪神間）の機関車を偶数とする改番が実施され、13 - 16は「6, 8, 10, 12」に、24 - 27は「34, 36, 38, 40」に改められました。

シャープ・スチュアート製の2両（36, 40）は、1882年に日本鉄道に譲渡され、同社のSS2/3形（16, 17）となりました。官設鉄道に残った34, 38は、そのまま西部地区で使用されていましたが、後に東部地区に転属しました。スティーブンソン製の4両についても、1884年から1885年にかけて東部地区に転属し、京浜間で運用されました。

1894年（明治27年）には、スティーブンソン製の4両はF形に、シャープ・スチュアート製はG形に類別されました。その際、シャープ・スチュアート製は、34が31に、38が32に改番されています。

1898年（明治31年）の鉄道作業局による分類では、両形式を統合してA4形となっています。

1906年（明治39年）に制定された鉄道国有法により、日本鉄道は買収・国有化され、同社に分かれていた2両は、再び官設鉄道に戻りました。この買収を受けて1909年（明治42年）に制定された鉄道院の形式称号規程では、スティーブンソン製の4両は120形（120 - 123）に、シャープ・スチュアート製のうち官設鉄道にとどまっていた2両は130形（130, 131）に、日本鉄道から戻った2両は140形（140, 141）に改められました。

その後、数年のうちに本グループは淘汰の対象となり、1912年（明治45年）から1915年（大正4年）にかけて、地方私鉄などに譲渡されました。譲渡後も私鉄の間を転々としたものが多く、中にはその私鉄の国有化によって、再度あるいは三度も国有鉄道に籍を移したものもあります。

保存

加悦鉄道に譲渡された1両（2号蒸気機関車。旧123号）が、京都府与謝郡与謝野町の「加悦鉄道資料館」に静態保存されています。同機は、2005年（平成17年）6月9日、その機関車台帳とともに国の重要文化財に指定されました。なお上回り（ボイラー）は製番2105であるが下回りは製番2103のものでありどこかで入れ替わったらしい。

120形は、日本の鉄道史における貴重な遺産として、その姿を今に伝えています。

もう一度検索