国鉄210形蒸気機関車

210形蒸気機関車

210形は、かつて日本国有鉄道の前身である鉄道院に在籍したタンク式蒸気機関車です。この機関車は、その歴史の中で数々の変遷を辿り、最終的には地方の鉄道でその役目を終えました。ここでは、210形の詳細な情報とその生涯について解説します。

導入と国有化

210形は、元々徳島鉄道が開業用としてアメリカのピッツバーグ社から1898年に3両（製造番号1779 - 1781）を導入した機関車です。車軸配置は2-4-2(1B1)で、2気筒単式の飽和式小型タンク機関車でした。同じく徳島鉄道に導入された3400形（車軸配置2-6-2(1C1)）とは系列設計であり、外観も似ていました。徳島鉄道では甲1形（1 - 3）と呼ばれていましたが、1906年（明治39年）に鉄道が国有化された際、1909年（明治42年）に210形（210 - 212）と改称されました。

国有化後の動向と譲渡

国有化後、210形は徳島線で使用されましたが、鉄道院の方針により少数形式の機関車は優先的に淘汰されることになりました。そのため、1915年（大正4年）4月には、212が小野田鉄道へ、210と211が美祢軽便鉄道へ払い下げられました。1920年（大正9年）には、美祢軽便鉄道が国有化されたため、210形は再び国有鉄道籍となりましたが、すぐに除籍され、2両とも小野田鉄道に払い下げられました。これにより、一時的に小野田鉄道に3両全てが揃うことになりました。

その後、212は同年中に宇部鉄道へ、210は1931年（昭和6年）2月に三岐鉄道へ譲渡されました。小野田鉄道に残った211は1937年（昭和12年）5月に、宇部鉄道の212も1938年（昭和13年）11月に廃車となりました。211は翌1939年（昭和14年）に浅野造船所に譲渡され、13に改番されましたが、太平洋戦争後間もなく廃車となりました。

一方、三岐鉄道に譲渡された210は、1938年4月にブローカーの手に渡り、その後、日本曹達泉工場を経て、1940年（昭和15年）に小名浜臨港鉄道に譲渡されました。同機は1944年（昭和19年）にB271に改称され、1952年（昭和27年）に廃車となりました。

主要諸元

以下に、210形の主要諸元を示します。

全長: 7,909mm
全高: 3,400mm
軌間: 1,067mm
車軸配置: 2-4-2(1B1)
動輪直径: 1,092mm
弁装置: スチーブンソン式アメリカ型
シリンダー（直径×行程）: 305mm×406mm
ボイラー圧力: 9.8kg/cm2
火格子面積: 0.73m2
全伝熱面積: 40.4m2
煙管蒸発伝熱面積: 35.7m2
火室蒸発伝熱面積: 4.7m2
小煙管（直径×長サ×数）: 44.5mm×2261mm×113本
機関車運転整備重量: 27.28t
機関車空車重量: 24.42t
機関車動輪上重量（運転整備時）: 19.00t
機関車動輪軸重（最大・第2動輪上）: 10.36t
水タンク容量: 4.08m3
燃料積載量: 1.07t

機関車性能

シリンダ引張力（0.85P）: 2,880kg
ブレーキ装置: 手ブレーキ、蒸気ブレーキ

参考文献

臼井茂信『国鉄蒸気機関車小史』鉄道図書刊行会、1958年。
臼井茂信『日本蒸気機関車形式図集成』誠文堂新光社、1969年。
臼井茂信『機関車の系譜図 2』交友社、1972年。
* 金田茂裕『形式別 国鉄の蒸気機関車 I』プレス・アイゼンバーン、1984年。

210形は、その生涯を通じて様々な鉄道会社を渡り歩き、最終的には地方の臨港鉄道でその役目を終えました。その歴史は、日本の鉄道史における一つの側面を物語る貴重な存在と言えるでしょう。

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