国鉄3250形蒸気機関車

3250形・3390形蒸気機関車：アメリカ生まれの個性派タンク機

3250形は、かつて鉄道院（後の日本国有鉄道）に在籍したタンク式蒸気機関車です。本項では、細部に差異が見られるものの、本質的に同形車である3390形についても解説します。

概要

3250形は、元々は両毛鉄道が1893年（明治26年）にアメリカのボールドウィン・ロコモティブ・ワークスから5両を輸入した機関車です。車軸配置は2-6-2(1C1)で、単式2気筒の飽和式タンク機関車でした。両毛鉄道が国有鉄道の管理を離れた1年後に製造された、両毛鉄道プロパーの機関車と言えます。両毛鉄道では1 - 5号機と付番され、1897年（明治30年）の日本鉄道への併合後は、B3/5形（501 - 505号機）となりました。筑豊鉄道に導入された後の鉄道院3300形をやや小型にしたような機関車でした。

1901年（明治34年）には、504号機が北海道炭礦鉄道に譲渡され、同社のM形、後にル形（58号機）となりました。北海道炭礦鉄道は同年、2両の同形車（製造番号19330, 19331）をボールドウィンに追加発注し、同じくル形に編入して59, 60号機としました。

1906年（明治39年）に両社は鉄道国有法によって買収され、所属する機関車は官設鉄道籍となりました。これを受けて1909年（明治42年）に制定された鉄道院の車両称号規程では、日本鉄道の4両は3250形（3250 - 3253号機）、北海道炭礦鉄道の3両は3390形（3390 - 3392号機）に改番されました。

これらは、メーカー規格では10-22 1/4Dという同一のものでした。2形式に分かれたのは、北海道炭礦鉄道が動輪のタイヤを増強し、直径を1,270mmから1,321mmに拡大したためです。

3250形は、主に構内入換で使用されました。しかし、1両が1917年（大正6年）1月に、残りが1918年（大正7年）に廃車となります。このうち1917年に廃車となった3253号機は白棚鉄道へ払い下げられて同社の1号機に、3251号機は八幡製鉄所へ、3250号機と3252号機は日中合弁企業である中日実業公司を通じて、中国の鉱山で使用されることになりました。白棚鉄道の1号機は、同鉄道が1938年（昭和13年）に鉄道省に借り上げられたことに伴い、再び国有鉄道で使用され、1940年（昭和15年）まで活躍しました。

八幡製鉄所の3251号機は84号機、後に318号機、最終的に343号機と改番されました。先輪および従輪を撤去して車軸配置0-6-0(C)に改造され、水タンクの形状を傾斜型とする、弁装置をワルシャート式に変更するなど、大規模な改造が施されましたが、1951年（昭和26年）まで使用されました。

3390形については、国有化後も北海道内で使用されましたが、1924年（大正13年）に全車が廃車となりました。その後、3391号機と3392号機が同年に、3390号機が翌年に釧路臨港鉄道に払い下げられ、同社の1 - 3号機となりました。そのうち、3号機は1936年（昭和11年）に事故廃車となり、1号機は1951年、2号機は1950年（昭和25年）に老朽化のため廃車されました。

主要諸元

3250形
全長: 9,810mm
全高: 3,607mm
全幅: 2,286mm
軌間: 1,067mm
車軸配置: 2-6-2(1C1)
動輪直径: 1,270mm
弁装置: スチーブンソン式アメリカ型
シリンダー（直径×行程）: 356mm×508mm
ボイラー圧力: 9.8kg/cm2
火格子面積: 1.35m2
全伝熱面積: 56.8m2
煙管蒸発伝熱面積: 51.1m2
火室蒸発伝熱面積: 5.7m2
ボイラー水容量: 2.5m3
小煙管（直径×長さ×数）: 44.5mm×2794mm×131本
機関車運転整備重量: 36.32t
機関車空車重量: 29.87t
機関車動輪上重量（運転整備時）: 27.69t
機関車動輪軸重（第2動輪上）: 10.80t
水タンク容量: 3.20m3
燃料積載量: 1.83t
シリンダ引張力: 4,220kg
ブレーキ装置: 手ブレーキ、蒸気ブレーキ

3390形

全長: 9,823mm
全高: 3,620mm
全幅: 2,350mm
軌間: 1,067mm
車軸配置: 2-6-2(1C1)
動輪直径: 1,321mm
弁装置: スチーブンソン式アメリカ型
シリンダー（直径×行程）: 356mm×508mm
ボイラー圧力: 9.8kg/cm2
火格子面積: 1.35m2
全伝熱面積: 57.7m2
煙管蒸発伝熱面積: 51.1m2
火室蒸発伝熱面積: 6.6m2
ボイラー水容量: 3.1m3
小煙管（直径×長さ×数）: 44.5mm×2,794mm×131本
機関車運転整備重量: 41.57t
機関車空車重量: 32.73t
機関車動輪上重量（運転整備時）: 31.62t
機関車動輪軸重（第3動輪上）: 11.64t
水タンク容量: 3.29m3
燃料積載量: 1.85t
シリンダ引張力: 4,220kg
ブレーキ装置: 手ブレーキ、蒸気ブレーキ

参考文献

臼井茂信「国鉄蒸気機関車小史」1956年、鉄道図書刊行会刊
臼井茂信「日本蒸気機関車形式図集成」1969年、誠文堂新光社刊
臼井茂信「機関車の系譜図 1」1972年、交友社刊
金田茂裕「形式別 日本の蒸気機関車 II」エリエイ出版部刊
金田茂裕「日本蒸気機関車史 私設鉄道編 I」エリエイ出版部刊
「日本に輸入されたBALDWIN製機関車の製造番号表」1969年、「SL」No.2、交友社刊

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