土岐頼殷

土岐頼殷（とき よりたか）：激動の時代を駆け抜けた大名

土岐頼殷は、江戸時代前期から中期にかけての大名で、出羽上山藩の第2代藩主、後に駿河田中藩の初代藩主となりました。大坂城代も務めるなど、幕府の要職を歴任しました。その生涯は、激動の時代を生き抜いた大名の軌跡を伝えます。

生い立ちと初期のキャリア

寛永19年（1642年）9月3日、土岐頼殷は上山藩主・土岐頼行の庶長子として誕生しました。しかし、当初は弟の土岐頼長が後継者とされていました。承応元年（1652年）に将軍徳川家綱に謁見し、寛文3年（1663年）には書院番士となります。その後、蔵米を与えられ、寛文7年（1667年）には小姓に転じ、さらに加増されて従五位下・伊予守に叙任されました。寛文12年（1672年）には小姓組番頭となり、奥詰も兼務し、1500俵の知行を得るまでになりました。

上山藩主としての治世

延宝6年（1678年）、後継者とされていた弟の頼長が病弱を理由に廃嫡されたため、頼殷が世継ぎとなることが認められました。これにより、幕府での職を辞し、蔵米知行も収公されました。同年8月16日、父の隠居に伴い、上山藩2万5000石の第2代藩主となりました。延宝7年（1679年）には知行地入りを果たしました。藩主としては、貞享4年（1687年）に小田切昌近を預かり、同年には下野烏山藩の改易に伴い、烏山城の受け取りを務めました。元禄3年（1690年）には奏者番に任じられました。

大坂城代としての活躍

元禄4年（1691年）1月11日、土岐頼殷は大坂城代に任命され、1万石を加増されて3万5000石の知行となりました。元禄5年（1692年）には領地替えが行われ、越前国を含む3国内で3万5000石を領有することになりました。これは、上山が大阪から遠いため、旧領地2万5000石が越前国に移されたことによるものでした。土岐家は越前国の所領を管轄するために、今立郡野岡村に陣屋を設置し、奉行や代官を置いて支配を行いました。この時期の土岐家の領地は「野岡藩」と呼ばれることもあります。元禄14年（1701年）には従四位下に昇叙し、京都所司代格となりました。宝永5年（1708年）には、越前国の領地の一部が播磨国に移されました。

田中藩への移封と晩年

正徳2年（1712年）5月15日、土岐頼殷は大坂城代を辞任し、駿河田中藩に移封されました。正徳3年（1713年）7月6日には家督を長男の頼稔に譲り、隠居しました。享保7年（1722年）9月22日、81歳（または82歳）でその生涯を閉じました。田中藩の増円寺に葬られましたが、後に品川東海寺の春雨庵に改葬されました。

系譜

父：土岐頼行
母：側室（福山氏）
正室：西郷延員の娘
継室：牧野親成の娘
側室（渡辺氏）
長男：土岐頼稔
その他子女多数

まとめ

土岐頼殷は、上山藩主から大坂城代、そして田中藩主へと、その時代における重要な役割を担いました。その生涯は、激動の時代を駆け抜けた大名としての足跡を今に伝えています。彼の事績は、江戸時代の大名政治や社会構造を理解する上で重要な手がかりとなるでしょう。

参考文献

石川美咲「野岡藩主 土岐頼殷にまつわる伝説　「野岡願教寺古喚鐘改鋳ニ付願書写」の紹介」『若越郷土研究』第62巻、第1号、2017年。doi:10.24484/sitereports.121555-61786。http://id.ndl.go.jp/bib/028519865。

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