牧野親成

牧野親成とは

牧野親成（まきの ちかしげ）は、江戸時代前期に活躍した大名で、下総関宿藩の第2代藩主、そして丹後田辺藩の初代藩主として知られています。また、江戸幕府の要職である京都所司代も務め、幕政にも深く関与しました。文化人との交流も盛んで、多方面でその才能を発揮した人物です。

生涯

慶長12年（1607年）、旗本であり初代関宿藩主の牧野信成の次男として生まれました。兄の早世により後継者となり、父から独立した旗本として取り立てられ、幼少の頃から3代将軍徳川家光の小姓を務めるなど、早くから幕府の中枢に関わっていました。寛永10年（1633年）には膳番、徒頭を歴任し、上総高根村に1000石を与えられます。寛永19年（1642年）には書院番頭、寛永21年（1644年）には父が関宿藩主になったことに伴い4000石を加増、さらに父の旧領である武蔵足立郡石戸に1000石を加増され、5000石の大身旗本となりました。

正保4年（1647年）11月26日、父の隠居により1万7000石の関宿藩2代藩主となりました。この際、石戸の5000石は父の隠居料とされました。慶安3年（1650年）に父が亡くなると、その隠居料は3人の弟に分与され、親成は2000石、残りの弟たちにはそれぞれ1500石が与えられました。

承応2年（1653年）9月には、久世広之や土屋数直らと共に4代将軍徳川家綱の御側として幕政に参与するようになります。翌承応3年（1654年）11月28日、板倉重宗の後任として京都所司代に任命され、河内高安郡内で1万石を加増されました。明暦2年（1656年）8月4日には、所領を関宿藩から河内、摂津に移封され、2万2600石に加増、高安郡の1万石と合わせ、都合3万2600石となりました。

京都所司代就任当初は、前任の板倉重宗の影響力が非常に大きく、重宗は親成の補佐として京都に留まりました。有名な逸話として、重宗が所司代を退任する際に、解決が難しい訴訟をわざと残し、それに対する自分の考えを添えて親成に預けた話があります。親成は重宗の考えに従って裁決を下しましたが、その迅速な処理が京都の町衆から賞賛され、それまで親成を軽視していた人々も彼を信頼するようになったと伝えられています。しかし、親成は重宗が始めた京都自治運営の規制を強化したため、後世には善政を施した人物として理想化された重宗とは対照的に、あまり知られていないとされています。

その他、明暦3年（1657年）には出版規制を命じる禁令を出し、町の寄合を毎月2日に開催することを義務付けました。また、寄合では板倉重宗が作成した「板倉重宗二十一ヶ条」を読み上げることを定め、これは京都町人の守るべき基本法として広く知られることとなりました。

文化人との交流も盛んで、黄檗宗萬福寺の寺地選定に関わり、隠元隆琦と親交を結びました。また、狩野探幽とも交流があり、茶会に招かれることもありました。明暦3年の明暦の大火で、探幽の茶入「棚村」が江戸から京都へ持ち出され売りに出された際、親成は購入した橘屋宗元から相談を受け、棚村の所在を確認し、探幽に知らせました。この功績から、探幽から富士山図10幅対を贈られたという逸話も残っています。棚村は探幽が買い戻した後、「都返り」と名付けられ、現在は「種村肩衝」と名前を変え、野村美術館に保管されています。

寛文8年（1668年）5月16日、病のため京都所司代を辞任し、後任には老中板倉重矩が任命されました。同年には、河内・摂津国内から丹後田辺藩3万5000石に移封されました。藩主としては、田辺城の城門や櫓の再建、家臣団の整理、藩政の基礎固めに尽力しました。延宝元年（1673年）9月29日には、家督を弟の富成に譲り隠居し、剃髪して哲山と号しました。延宝5年（1677年）9月23日に71歳で亡くなりました。

系譜

父: 牧野信成（1578年 - 1650年）
母: 鳥居忠政の養女（土岐定政の娘）
正室: 春光院（酒井忠勝養女、高木正縄の娘）
子女: 建部政明正室、後に土岐頼殷継室
養子: 牧野富成（1628年 - 1693年、弟、牧野信成の八男）

脚注

詳細な情報や参考文献については、以下の書籍をご参照ください。

藩主人名事典編纂委員会編『三百藩藩主人名事典 二』新人物往来社、1986年。
藩主人名事典編纂委員会編『三百藩藩主人名事典 三』新人物往来社、1987年。
朝倉治彦・三浦一郎編『世界人物逸話大事典』角川書店、1996年。
門脇むつみ『巨匠 狩野探幽の誕生 江戸初期、将軍も天皇も愛した画家の才能と境遇』朝日新聞出版（朝日選書）、2014年。
熊倉功夫『熊倉功夫著作集 第5巻 寛永文化の研究』思文閣出版、2017年。
* 五十嵐公一『裁かれた絵師たち 近世初期京都画壇の裏事情』吉川弘文館、2021年。

もう一度検索