地球的課題の実験村構想具体化検討委員会

地球的課題の実験村構想具体化検討委員会とは

地球的課題の実験村構想具体化検討委員会は、成田空港問題の解決を目指す円卓会議での提案を具体化するために設置された委員会です。この委員会は、単に空港建設の是非を議論するだけでなく、より広い視野で地球規模の課題解決に貢献する新たな社会モデルを模索することを目的としていました。

委員会の設立経緯

成田空港問題円卓会議において、反対同盟はB、C滑走路の建設予定地を「地球的課題の実験村」として開放することを提案しました。この提案は、「児孫のために自由を律す農的価値の回復を」という理念に基づき、自然と共生する持続可能な社会のあり方を追求するものでした。

円卓会議ではこの構想の意義を高く評価し、最終的な所見として運輸省に速やかな具体化の検討を求めました。しかし、実験村の予定地をめぐり、当時の多古町長や芝山町長から、B、C滑走路予定地に限定せず周辺地域を含めた広い範囲での実施を求める意見も出されました。

1995年1月24日、宇沢弘文氏を座長として第1回委員会が開催され、合計22回の委員会が開催されました。しかし、議事録は非公開とされています。

委員会の活動と最終報告

委員会では、実験村構想の具体化に向けた様々な議論が行われました。1998年5月1日、第22回の委員会で最終報告書「若い世代へ 農の世界から地球の未来を考える」が取りまとめられ、委員会は解散しました。

最終報告では、実験村の理念や具体的な活動内容がまとめられましたが、二期地区内での実験村建設については明確な言及がありませんでした。この点に対し、反対同盟の一部は反発し、反対運動を継続する意思を示しました。

宇沢弘文氏の「三里塚農社」構想

委員会座長を務めた宇沢弘文氏は、委員会において「三里塚農社」構想を提示しました。これは、空港敷地外での実験村実現を目指すもので、政府側も候補地や財源について内諾していたとされています。しかし、農民側が空港敷地内の条件を譲らなかったため、この構想は実現には至りませんでした。

エコ・エアポート基本構想

委員会解散後、運輸省と空港公団は「エコ・エアポート基本構想」を発表しました。これは、委員会の結論を踏まえ、環境問題への配慮を盛り込んだ空港づくりを目指すものでした。

エコ・エアポート基本構想は、「地球的視野に立った循環型の空港づくり」と「空港周辺地域の農業再生への協力」の2本柱で構成されています。新東京国際空港公団（現・成田国際空港株式会社）は、2005年3月に「エコ・エアポート基本計画」を策定し、以後5年程度ごとに見直しを行っています。

2011年4月には「エコ・エアポートビジョン2020」、2016年4月には「エコ・エアポートビジョン 2030」を策定し、環境に配慮した空港づくりを推進しています。また、「成田国際空港エコ・エアポート推進協議会」を設置し、地域社会との連携も図っています。

地球的課題の実験村（ボランティア団体）

委員会の解散後も、反対同盟（旧熱田派）の一部は、実験村の理念を継承し、ボランティア団体「地球的課題の実験村」を設立して活動を続けています。この団体は、成田国際空港周辺の農民を中心に構成されており、以下の3つのプロジェクトを中心に活動を展開しています。

北総大地夕立計画: 地域環境の保全や生態系の回復を目指す活動
農と食 〜麦･大豆畑トラストと自前の種づくり〜: 持続可能な農業の実践と食料の自給自足を推進する活動
地域自立のエネルギー: 地域資源を活用したエネルギー自給を目指す活動

この団体は、活動拠点として「木の根ペンション」を使用し、地域に根差した活動を展開しています。

まとめ

地球的課題の実験村構想具体化検討委員会は、成田空港問題という地域的な課題を、地球規模の課題解決に結びつけようとする画期的な試みでした。委員会は解散したものの、その理念はエコ・エアポート構想やボランティア団体「地球的課題の実験村」によって受け継がれ、現代社会における持続可能な開発のあり方を問い続けています。

出典

成田空港地域共生委員会記録集(PDF) 共生委員会記録集編集委員会 (2011年1月)

関連項目

成田空港問題（三里塚闘争）

外部リンク

成田国際空港エコ・エアポート推進協議会
* 地球的課題の実験村

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