地豆于

地豆于（Dìdòuyú）とは

地豆于（ちとうう、拼音：Dìdòuyú）は、5世紀から6世紀にかけて、現在の中国北部の洮児河（とうじが）とシラムレン河の間に遊牧していた民族です。『北史』では地豆干（ちとうかん）と表記されています。

歴史

地豆于は、北魏と友好的な関係を築き、頻繁に朝貢を行っていました。しかし、高句麗との対立や長城を越えての侵入など、緊張関係も存在しました。

北魏との関係： 延興2年（472年）8月、地豆于は北魏に初めて使節を派遣し、貢物を献上しました。その後、太和6年（482年）まで、北魏への朝貢が絶えることはありませんでした。このことから、地豆于は北魏との交易や政治的な関係を重視していたことが伺えます。
高句麗との対立： 太和3年（479年）、高句麗は柔然と共謀して、地豆于の領土を分割して占領しようとしました。これは、地豆于が高句麗にとって脅威となる存在であったか、あるいは戦略的に重要な位置にあったためと考えられます。地豆于は高句麗の侵略に対し、どのように抵抗したのか、あるいはどのような影響を受けたのかは、今後の研究課題です。
北魏への侵入： 太和14年（490年）、地豆于は頻繁に長城を越えて北魏領内に侵入しました。このため、孝文帝は征西大将軍・陽平王の拓跋頤（たくばつ い）に命じて、地豆于を討伐させました。この事件は、地豆于と北魏の関係が悪化していたことを示唆しています。しかし、その後も武定年間末まで、地豆于からの貢使は絶えませんでした。これは、両者の関係が完全に断絶することはなく、一定の交流が続いていたことを意味します。

習俗

地豆于は、遊牧生活を送り、独自の文化を持っていました。

牧畜： 牛や羊を多く飼育し、良質な馬を産出していました。これらの家畜は、食料や衣服の材料としてだけでなく、交易品としても重要な役割を果たしていたと考えられます。
食生活： 五穀を栽培することはなく、肉や酪（ヨーグルトのようなもの）を主な食料としていました。これは、地豆于が遊牧生活に適応した食文化を持っていたことを示しています。
衣服： 動物の皮を衣服として着用していました。これは、厳しい自然環境の中で生活するために、実用性を重視した結果と考えられます。

地理

地豆于は、室韋（しつい）の西1000余里の位置に居住していました。このことから、地豆于は現在のモンゴル高原東部から中国東北部にかけての地域に勢力を持っていたと考えられます。

関連民族

地豆于は、周辺の民族との交流や影響を受けながら、独自の文化を形成していきました。関連する民族として、以下のものが挙げられます。

烏洛侯（うろこう）
契丹（きったん）
奚（けい）
高句麗（こうくり）
室韋（しつい）
粛慎（しゅくしん）
女真（じょしん）
豆莫婁（とうばくろう）
モンゴル

参考資料

『魏書』（列伝第八十八）
* 『北史』（列伝第八十二）

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