烏洛侯

烏洛侯（ウラクコウ）とは

烏洛侯（うらくこう）は、北朝時代から唐代にかけて、現在の内モンゴル自治区フルンボイル市周辺に居住していた遊牧民族です。唐代には烏羅渾（うらこん）、あるいは烏羅護（うらご）とも呼ばれていました。狩猟と農耕も行っていました。

歴史

北魏時代

烏洛侯が歴史に登場するのは、北魏の時代です。太平真君4年（443年）に初めて北魏へ入朝しました。その際、烏洛侯の使者は「烏洛侯国の西北に北魏の先帝の旧墟石室があり、多くの民が参拝している」と報告しました。これを受けて、太武帝は中書侍郎の李敞を派遣し、その真偽を確かめさせるとともに、石室の壁に祝文を刻ませました。この出来事は、烏洛侯と北魏との間に関係があったことを示唆しています。

唐代

唐代になると、烏洛侯は烏羅渾、または烏羅護と呼ばれるようになりました。貞観6年（632年）には、烏羅渾の君長が使者を派遣し、貂皮を献上しています。しかし、その後、烏羅渾は室韋に吸収されたと考えられており、室韋の構成部族の中に「烏羅護部落」の名が見られます。これにより、烏洛侯は次第に歴史の表舞台から姿を消していきました。

地理

烏洛侯の居住地は、地豆于の北、中国の代から4500余里離れた場所にありました。烏洛侯国の西北には完水（現在の黒龍江）が流れ、東北の難水（現在の松花江）と合流し、さらに多くの小川が難水に流れ込んで東の海（オホーツク海）へと注いでいました。また、西北へ20日ほど行くと、于巳尼大水、すなわち北海（バイカル湖）がありました。これらの記述から、烏洛侯国は現在の内モンゴル自治区フルンボイル市周辺に位置していたと考えられます。

唐代における周辺国としては、東に靺鞨、西に突厥、南に契丹、北に烏桓が存在していました。これらの民族との関係が、烏洛侯の歴史にどのような影響を与えたのかは、今後の研究課題と言えるでしょう。

習俗

烏洛侯の人々は、冬には地下に部屋を掘って生活し、夏には牧畜を行っていました。豚を多く飼育し、穀麦も栽培していました。大君長はおらず、部落の莫弗（ばくふつ：部族長）が代々統治していました。髪型は縄髪（三つ編み）で、皮の服を着て珠を装飾品として身につけていました。人々は勇敢で、盗みを働くようなことはありませんでした。狩猟を得意とし、楽器としては箜篌（くご）を使用していました。箜篌は木槽革面に九弦を張った楽器でした。

唐代の記録には、「風俗は靺鞨と同じ」と記されています。このことから、烏洛侯は靺鞨との間に文化的な共通点を持っていたと考えられます。ただし、具体的な風俗習慣の詳細については、今後の研究が待たれます。

まとめ

烏洛侯は、北朝時代から唐代にかけて現在のフルンボイル市周辺に居住していた遊牧民族であり、北魏や唐との交流を通じて歴史に名を残しました。彼らは独自の文化を持ち、周辺民族との関係の中で生活していたと考えられます。しかし、室韋に吸収されたことで、次第に歴史から姿を消していきました。烏洛侯の研究は、当時の北東アジアの民族や文化を理解する上で重要な意味を持つと言えるでしょう。

参考文献

『魏書』（列伝第八十八）
『北史』（列伝第八十二）
* 『旧唐書』（列伝第一百四十九下 北狄）

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