地震観測網

地震観測網とは

地震観測網とは、地震計を主体とした地震観測を行うためのネットワークシステムです。このシステムは、地震発生のメカニズムを解明し、災害発生時の被害を最小限に抑えるために、重要な役割を果たしています。観測は基本的に24時間体制で行われ、得られたデータは、地震発生の即時検知や津波の早期警戒に活用されるほか、地下構造の解析や地殻変動の研究にも利用されます。

観測の目的と利用

公的機関による観測:

主な目的は、震源の位置や地震の規模を迅速に把握することです。
観測データは、緊急地震速報などの警報システムや、被害規模の即時推定、リスク評価に用いられます。
得られたデータは、地下構造の解明や地殻変動の研究にも役立てられます。
海底ケーブル式のシステムでは、水圧計を利用して津波の観測も行われます。

自治体や企業による観測:

地震発生後の被害規模を推定し、災害対策に役立てることを目的としています。

観測機器

地上の観測点:

地震動を検知する地震計、地殻変動を検出する傾斜計、ひずみ計、GPS変位計、GNSS計測機器などが設置されています。
地震計には、高感度地震計、強震計、広帯域地震計などがあり、観測目的に合わせて使い分けられています。
これらの機器は、地表や地中の井戸に設置されます。
停電に備え、発電機や蓄電池が設置されている観測点もあります。

海底の観測点:

地震計、水圧計、ハイドロフォン（水中マイク）、精密温度計、磁気センサーなどが設置されています。

日本の主な観測網

公的機関:

気象庁: 日本全国に地震計を設置し、地震活動を監視しています。
津波地震早期検知網: 1993年の北海道南西沖地震を契機に整備されました。
東海地震の想定震源域: 静岡県内の陸上と駿河トラフ沿いの海中に観測機器を設置しています。
東海・東南海沖ケーブル式常時海底地震観測システム: 東南海地震の想定震源域に設置され、東海沖ケーブル式常時海底地震観測システムとDONETの観測域を補完します。
房総沖: 水圧計による津波観測システムが運用されています。
海洋研究開発機構: 相模湾初島沖、高知県室戸岬沖、釧路・十勝沖に海底地震総合観測システムを運用しています。
防災科学技術研究所:
陸海統合地震津波火山観測網（MOWLAS）: 地震、津波、火山の観測網を統合運用しています。
高感度地震観測網 (Hi-net): 微弱な地震動を捉え、震源位置の決定や地下構造の推定に活用されます。
強震観測網 (Kik-net, K-net): 強震動を捉え、地震ハザード・被害リスク評価に活用されます。
広帯域地震観測網 (F-net): ゆっくりとした地震動を捉え、地震のメカニズム解や地下構造の推定に活用されます。
相模トラフ沿い: 海底ケーブル式地震計が設置されています。
DONET: 東南海地震の想定震源域の海底に敷設された地震・津波観測監視システムです。
DONET2: 南海地震の想定震源域の海底に敷設された地震・津波観測監視システムです。
南海トラフ海底地震津波観測網（N-net): 南海地震の想定震源域と日向灘の海底に敷設された地震津波観測網です。
日本海溝海底地震津波観測網 (S-net): 日本海溝沿いに敷設された海底ケーブル式の観測網です。
首都圏地震観測網 (MeSO-net): 首都直下地震防災・減災特別プロジェクトの一環として運用されています。
港湾空港技術研究所: 全国61の港湾に強震計を設置しています。

自治体や大学:

東京大学: 伊豆半島東方沖、日本海・粟島付近、釜石沖に観測点を設置しています。
川崎市、横浜市: それぞれ独自の観測システムを運用しています。
東京ガス: 超高密度リアルタイム地震防災システムSUPREMEを運用しています。
首都圏強震動総合ネットワーク (SK-net): 首都圏の自治体と東京大学が連携して運用している観測網です。

海外の観測網:

IRIS: 国際的な地震観測網です。
インドネシア、アジア太平洋地域: 各国で地震観測網が整備されています。

これらの観測網を通じて、地震に関する多種多様なデータが収集・分析され、防災対策や研究に貢献しています。

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