坂上瀧守

坂上瀧守（さかのうえ の たきもり）は、平安時代初期から前期にかけての貴族です。大和守・坂上鷹養の孫であり、正六位上・坂上氏勝の子として生まれました。最終的な官位は従四位下・大和守です。

武芸の才と官途

幼少の頃から武芸に親しみ、弓馬の稽古に励んだ瀧守は、特に歩射の腕前が優れていました。仁明朝の承和10年（843年）に官途に就き、左近衛将曹に任ぜられたのを皮切りに、節会では歩射や騎射を披露しました。文徳朝に入ると、仁寿年間初頭（851年頃）には左近衛将監に昇進。文徳朝末の斉衡4年（857年）には従五位下に叙爵され、翌天安2年（858年）には左馬助に任ぜられますが、同年中に伯耆介、駿河介と地方官を歴任しました。

清和朝に入っても、貞観2年（860年）には山城介、貞観4年（862年）正月には武蔵介と地方官を歴任し、同年2月には右兵衛権佐に任ぜられて京官に復帰しました。貞観8年（866年）には従五位上・右近衛少将に昇進しています。

大宰府での活躍

貞観11年12月（870年1月）には、北九州地方を荒らす新羅の海賊対策のため、大宰少弐を兼任し、近衛少将のまま大宰府の警固を担当しました。瀧守は、博多が他国からの船舶が頻繁に往来する西国警固の要所であるにもかかわらず、鴻臚館から離れているため、不測の事態への対応が難しいと判断しました。そこで、鴻臚館から統領1人・選士40人・甲冑40具を移し設置することを提言し、認められました。さらに、既存の警固要員に加え、統領2人・選士100人の増員も求め、これも承認されました。これらの措置により、大宰府の警固体制は大幅に強化されました。

貞観14年（872年）には大宰大弐に昇格し、貞観16年（874年）には大宰府警固の任を解かれて帰京し、左近衛権少将に任ぜられました。清和朝末の貞観18年（876年）には正五位下に叙せられました。

その後

元慶3年（879年）には従四位下・陸奥守に叙任されますが、これは遙任であり、翌元慶4年（880年）に大和守として任国に赴任し、任地で生涯を終えたとされています。元慶5年（881年）11月9日に57歳で亡くなりました。

逸話

瀧守は、貞観年間に枯れてしまった宮中の左近桜を、根から生じた芽から復活させたという逸話も残されています。

官歴

承和10年（843年）: 左近衛将曹
仁寿年間初頭: 左近衛将監
時期不詳: 正六位上
斉衡4年（857年）正月7日: 従五位下
天安2年（858年）2月5日: 左馬助
天安2年（858年）3月24日: 伯耆介
天安2年（858年）5月21日: 駿河介
貞観2年（860年）正月16日: 山城介
貞観4年（862年）正月13日: 武蔵介
貞観4年（862年）2月14日: 右兵衛権佐
貞観5年（863年）3月28日: 次侍従
貞観8年（866年）正月7日: 従五位上
貞観8年（866年）正月13日: 右近衛少将兼阿波介
貞観11年（869年）12月13日: 兼大宰権少弐、阿波介如故
貞観14年（872年）2月29日: 兼大宰大弐
貞観16年（874年）: 左近衛権少将
貞観18年（876年）: 正五位下
貞観19年（877年）: 兼近江介
元慶3年（879年）正月7日: 従四位下
元慶3年（879年）: 陸奥守
元慶4年（880年）: 大和守
元慶5年（881年）11月9日: 卒去（従四位下行大和守）

参考文献

* 武田祐吉、佐藤謙三訳『読み下し 日本三代実録 上巻』戎光祥出版、2009年

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