坂東竹三郎 (5代目)

五代目坂東竹三郎：関西歌舞伎界の至宝

1932年、大阪に生まれた五代目坂東竹三郎は、戦後から令和にかけて活躍した歌舞伎役者です。屋号は音羽屋、定紋は鶴の丸、替え紋は八重片喰を使用していました。

華麗なるキャリア

1949年、四代目尾上菊次郎に入門し、「尾上笹太郎」として初舞台を踏みます。その後、三代目坂東薪車を経て、1967年には五代目坂東竹三郎を襲名。女形として高い評価を得るとともに、ベテラン俳優として多くの作品を支えました。

持ち前の才能と努力で、古典演目の復古にも大きく貢献しました。特に、長らく途絶えていた「女團七」を復活させたことは、歌舞伎史に残る偉業と言えるでしょう。市川亀治郎（当時）と共演したこの公演は、大きな話題を呼びました。

自主公演とビジネス感覚

坂東竹三郎は、自主公演を積極的に行うことでも知られています。その数は、類を見ないほど多く、さらに驚くべきことに、赤字を出したことがないという徹底したビジネス感覚を持っていました。これは、歌舞伎俳優としてだけでなく、プロデューサーとしても優れた才能を持っていたことを示しています。四代目市川猿之助ですら「ぜったいに黒字にはできない」と語る自主公演を黒字経営できたことは、稀有な才能の証左と言えるでしょう。

多彩な活動と晩年

歌舞伎だけでなく、日本舞踊でも藤間勘寿朗に師事するなど、幅広い才能を発揮しました。映画にも出演し、俳優としての幅を広げました。「スーパー歌舞伎II ワンピース」など、新作歌舞伎にも積極的に挑戦するなど、常に新しいことに挑戦する姿勢を持ち合わせていました。

プライベートでは、舞台鑑賞や映画鑑賞を趣味とし、東京公演の際にはホテルで自炊するなど、ストイックな一面も持ち合わせていました。

2022年6月17日、骨髄異形成症候群のため、大阪市内の病院で亡くなりました。享年90歳。直前まで精力的に活動を続け、2021年12月には南座で『雁のたより』に出演、2022年にも松尾芸能賞功労賞を受賞するなど、最後まで舞台への情熱を燃やし続けました。

受賞歴

数々の賞を受賞し、その功績は広く認められました。主な受賞歴は以下の通りです。

十三夜会賞助演賞（1994年、95年、99年）
十三夜会賞奨励賞（1998年）
大阪市民表彰（2000年）
第24回松尾芸能賞優秀賞（2003年）
第13回日本俳優協会賞特別賞（2007年）
文化庁長官表彰（2009年）
2018年度大阪文化祭賞（2018年、大阪松竹座『女殺油地獄』の母おさわ）
第43回松尾芸能賞功労賞（2022年）

弟子と後継

1998年、俳優の鈴木道行が坂東竹志郎として入門。その後、坂東薪車の名跡を継承しましたが、2005年に芸養子関係を解消しました。四代目薪車はその後、市川海老蔵の門下に移り、現在は市川九團次として活躍しています。

大阪歌舞伎を支えた巨匠

五代目坂東竹三郎は、関西歌舞伎界の至宝であり、その功績は計り知れません。古典の継承と発展、そして新たな歌舞伎の可能性を追求し続けた彼の生涯は、後世に長く語り継がれることでしょう。彼の功績は、歌舞伎界のみならず、日本の演劇史においても重要な位置を占めるものです。

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