坊門姫 (一条能保室)

坊門姫（ぼうもんひめ）

坊門姫は、平安時代末期から鎌倉時代初期にかけて活躍した女性です。源義朝を父に、由良御前を母に持ち、鎌倉幕府を開いた源頼朝の同母妹（または同母姉）として知られています。

生涯

坊門姫は久寿元年（1154年）または久安元年（1145年）に生まれたとされ、建久元年（1190年）に亡くなりました。本名は不明で、『平治物語』では「坊門の姫」と呼ばれています。

父・義朝が平治の乱で討たれ、同母兄弟である頼朝らが流罪となった後、坊門姫は後藤実基に預けられ、都で密かに育てられました。その後、貴族である一条能保の妻となり、九条良経室や一条高能らを産んでいます。この縁戚関係は、東国で勢力を拡大した頼朝にとって、都との重要な接点となりました。能保は都における鎌倉政権の出先機関として重用され、坊門姫自身も頼朝から備後国信敷荘などの地頭職を与えられています。

文治2年（1186年）には、頼朝の推挙により、娘の保子が後鳥羽天皇の乳母として出仕しました。

建久元年（1190年）4月20日、坊門姫は高齢出産による難産が原因で亡くなりました。頼朝は彼女の死を深く悲しみ、鎌倉の勝長寿院で追善法要が営まれました。

子孫

坊門姫の血筋は、鎌倉幕府に大きな影響を与えました。娘の一人は九条良経に嫁ぎ、九条道家と順徳天皇の中宮である立子を産みました。もう一人の娘は西園寺公経に嫁ぎ、西園寺実氏と掄子を産みました。九条道家と掄子が結婚したことで、五摂家のうち九条家、一条家、二条家が誕生しました。また、道家と掄子の間には藤原頼経が生まれています。

源氏の将軍が途絶えた後、坊門姫の曾孫である藤原頼経が鎌倉幕府の4代将軍に迎えられました。さらに、7代将軍惟康親王と8代将軍久明親王は来孫、9代将軍守邦親王は昆孫にあたります。

生年に関する議論

坊門姫の生年については、研究者の間で議論があります。『吾妻鏡』の記述から逆算すると1145年生まれとなり、頼朝の姉となりますが、『平治物語』には平治の乱時に6歳であったという記述があります。角田文衞は、『吾妻鏡』の享年46は36の誤記であるとし、『平治物語』の記述を重視しています。一方、貫達人は『吾妻鏡』の記述を尊重しています。

坊門姫は、源頼朝の姉妹として、また有力貴族との婚姻を通じて、鎌倉幕府の成立と発展に大きく貢献した女性でした。

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