埤雅

埤雅（ひが）

『埤雅』は、北宋の陸佃（りくでん）によって編纂された辞典であり、主に動植物について解説した全20巻の書物です。

成立の背景

陸佃は、字を農師といい、越州山陰県（現在の浙江省紹興市柯橋区）の出身でした。王安石の門人であり、新法には必ずしも賛成ではありませんでしたが、王安石の失脚後も忠誠を尽くしました。神宗、哲宗、徽宗の三帝に仕え、尚書左丞にまで昇進しました。ちなみに、南宋の詩人である陸游は陸佃の孫にあたります。

陸佃は『詩経』に登場する動植物に関する深い知識を持っていました。北宋の神宗が熙寧年間に科挙の改革を行い、試験範囲から詩賦を除いて経学を重視するようになると、陸佃の講義は人気を博しました。そこで陸佃は、講義内容を書物にすることを思い立ち、まず「説魚」「説木」の2篇を神宗に献上しました。当初、書物は『物性門類』という題名でしたが、完成前に神宗が崩御。その後、陸佃は40年もの歳月をかけて書物を改訂し、『爾雅』を補佐する書物という意味を込めて『埤雅』と名付けました。

『直斎書録解題』には、『詩物性門類』8巻という著者不明の書物が見られ、これは『埤雅』の稿本ではないかと推測されています。また、平安時代の日宋貿易において、藤原頼長が宋の商人、劉文冲に要望した書物一覧にも、『詩物性門類』と推定される書物が含まれています。

構成と内容

『埤雅』は、以下の8篇20巻で構成されています。

釈魚（2巻）
釈獣（3巻）
釈鳥（4巻）
釈虫（2巻）
釈馬（1巻）
釈木（2巻）
釈艸（4巻）
釈天（2巻）

巻20の末尾に「後欠」とあることから、現存する『埤雅』は完全な形ではない可能性があります。各篇の分類は、「釈馬」を除き『爾雅』にも見られます。

項目数は297と少ないものの、『爾雅』とは異なり、各項目に対して百科事典的な詳細な説明が加えられているのが特徴です。

『四庫提要』によれば、『埤雅』の内容は多岐にわたりますが、現在では失われた多くの書物を引用している点が評価されています。

同時代の類似書物としては、南宋の羅願による『爾雅翼』があります。

外部リンク

陸佃『埤雅』 （益雅堂叢書本）
陸佃『埤雅』 （巻一至四 巻五至八 巻九至十二 巻十三至十六 巻十七至十九 巻二十）（四庫全書本）
郎奎金輯 編『五雅』1626年

関連項目

新法・旧法の争い

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