直斎書録解題

『直斎書録解題』は、南宋を代表する書目解題であり、陳振孫（1179-1262）によって編纂された貴重な文献です。全22巻からなる本書は、陳振孫自身の膨大な蔵書を基に作成されており、その規模と精緻さから、中国の文献学、目録学研究において重要な位置を占めています。

陳振孫は、字を伯玉、号を直斎といい、湖州安吉県出身です。20歳を過ぎ官界入りし、江西、福建、浙江といった文化が栄えた地域で地方官を歴任しました。その間、国子監司業や侍郎などの要職を歴任し、公私を通じて多くの蔵書に触れる機会を得ました。そして、約4000種、5万巻を超える書物を蒐集したと伝えられています。

『直斎書録解題』には、3096種、51180巻の書物が収録されています。これらは、経、史、子、集の四部五十三類に分類されており、その分類体系は『新唐書』「芸文志」や『郡斎読書志』の影響を強く受けていると考えられます。具体的には、経部10類、史部16類、子部20類、集部7類という構成になっています。

本書の特徴として、各書物に関する詳細な記述が挙げられます。単なる書名、巻数、著者名だけでなく、学問の源流、版本の評価、入手経路といった情報が解題として付記されています。これらの情報は、当時の書物の伝播状況を知る上で極めて貴重です。ただし、序跋に相当する部分は存在せず、類序も特に説明を要する7類のみに付されています。

原本は56巻からなる大部の書物でしたが、多くが散逸してしまいました。現在、広く利用されている22巻本は、清代に『四庫全書』が編纂された際に、四庫全書館の官員たちが『永楽大典』の中から該当する部分を輯録してまとめられたものです。この作業によって、本書は後世に伝えられ、研究者たちの貴重な資料として活用されています。

『直斎書録解題』は、単なる書目録にとどまりません。南宋時代の書物の伝播状況、当時の学問動向、さらには蔵書家の活動を知るための重要な手がかりを提供する資料です。その詳細な記述と膨大な収録量は、中国の文献学、目録学研究において、他に類を見ない価値を持つと言えるでしょう。本書は、書誌学、文献学、歴史学など、多様な分野の研究者にとって、不可欠な研究資料であり続けるでしょう。

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