堀基

堀基：北海道開拓の礎を築いた薩摩藩士、実業家

堀基（ほり もとい）は、天保15年（1844年）に薩摩藩で生まれ、明治45年（1912年）に没した人物です。彼は幕末から明治にかけての激動の時代に、武士、実業家として多岐にわたる分野で活躍し、特に北海道の開拓と発展に大きく貢献しました。北海道炭礦鉄道（後の北海道炭礦汽船）の初代社長を務め、貴族院議員にも選出されています。

来歴

薩摩藩に生まれた堀は、幼少の頃から勉学に励み、江川坦庵の門下で砲術を学びました。その後、勝海舟の神戸海軍操練所に入所し、航海術を習得するなど、幅広い知識と技能を身につけました。

戊辰戦争では、薩摩藩士として鳥羽・伏見の戦いに参加し、旧幕府軍と戦いました。戦後、箱館裁判所監察として渡道し、翌年には開拓使に移り、開拓中判官、開拓大書記官、屯田事務局長などを歴任しました。開拓使では、薩摩閥の一員として頭角を現し、同郷の先輩である黒田清隆と共に樺太に駐在し、対ロシア交渉にもあたりました。西南戦争では、准陸軍大佐として屯田兵を率いて従軍しています。

1882年の開拓使廃止後、堀は実業界に転身しました。小樽で対馬嘉三郎と共に大有社（北海道初の商社）を設立し、函館の商人らと共に北海道運輸会社（後の日本郵船の一部）を設立しました。三井物産の資本協力を得て海運業に参入するなど、その手腕を発揮しました。

また、札幌県令も務め、1886年の廃県置庁により北海道庁が設置されると理事官に就任しました。しかし、薩摩閥の人脈を背景にした彼のやり方には、他藩出身者からの反感も少なくなかったようです。

1888年、後輩の永山武四郎が北海道庁長官に就任すると、堀は理事官を辞し、北海道炭礦鉄道を設立しました。幌内炭鉱や官営鉄道の払い下げは、永山長官や北有社の村田堤らと事前に示し合わせたものであったとされています。

当時の堀は、「官に在りては道庁の枢機を掌握し、野に下りては本道実業界の牛耳を執り、其勢力並ぶものなく、時人呼んで北海道副王」と称されるほどの影響力を持っていました。新会社の認可手続きが終わると、長官である永山自身が書類を携えて堀の邸宅に出向いたという逸話も残っています。

しかし、その専制的な経営は不評を買い、堀はほどなくして経営から退きました。その後、日本郵船会社理事なども務めましたが、中央政界における薩摩閥の衰退とともに一線を退きました。

晩年は、私財を投じて北鳴学校（後の札幌中学）を開設し、札幌農学校の新渡戸稲造を招いて高等教育を行うなど、教育分野にも貢献しました。1894年には勅選により貴族院議員に就任し、1912年に東京で生涯を閉じました。墓所は青山霊園にあります。

栄典

堀基の功績は高く評価され、1889年には大日本帝国憲法発布記念章が授与されています。

関連事項

堀の生涯は、北海道の開拓と発展の歴史と深く結びついています。彼が関わった官営幌内鉄道や北海道炭礦汽船は、北海道の産業発展に大きく貢献しました。また、手塚治虫の漫画作品『シュマリ』には、村田らと共に実名で登場しています。

堀基は、薩摩藩士としての誇りを持ちながら、北海道の開拓と発展に尽力した人物です。その功績は、今日の北海道の礎となっています。

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