堀川町 (川崎市)

堀川町（ほりかわちょう）

神奈川県川崎市幸区に位置する堀川町は、同区の南東端、多摩川の右岸に広がる低地の町です。住居表示は実施されておらず、面積は約29.7万平方メートルを有します。地理的には、北東側は多摩川を挟んで東京都大田区と向き合い、南東側はJRの各線（南武線、京浜東北線、東海道線）の線路を境に川崎区の駅前本町や日進町に隣接しています。また、西側は中幸町、幸町、大宮町に接しています。

交通の要衝であり、町内にJR川崎駅の西口が位置しており、京急川崎駅へもほど近い距離にあります。駅周辺には川崎駅西口および川崎駅西口北の二箇所にバスターミナルが設けられ、多くの路線バスが発着しています。町域の多摩川沿いには国道409号が走り、南北方向には神奈川県道9号川崎府中線（府中街道）が縦断しており、地域内外へのアクセスを支えています。

この地域は、かつては大規模な工場が集中する工業地帯でした。しかし、1980年代以降に主要工場の閉鎖が進み、その広大な跡地を活用した大規模な再開発が行われました。府中街道の東側に位置する旧明治製菓川崎工場の跡地には、オフィスビルを中心とした「ソリッドスクエア」が建設されました。さらにその東側に広がる旧明治製糖川崎工場の跡地は、「かわさきテクノピア」として再整備され、オフィスビルや公団住宅などが建設されました。一方、府中街道の西側、旧東芝川崎事業所の跡地には、「ラゾーナ川崎」と名付けられた複合施設が誕生し、大規模商業施設や住宅棟、オフィス棟などが一体的に整備されています。

堀川町の歴史は、現在の町域がかつて御幸村の南河原地区や川崎町の砂子、堀之内、新宿といった地域の一部であったことに遡ります。明治時代に入り、1906年には横浜精糖（後に明治製糖と合併）が粗糖精製工場を開設し、これが川崎の工業都市としての発展の契機の一つとなりました。この工場の跡地には記念碑が建立されています。1908年には東京電気（後の東芝）の川崎工場も進出し、工業集積が進みました。1924年、これらの旧村や旧町の一部を再編する形で「堀川町」が新設されました。町名の由来については、かつてこの地に二ヶ領用水の大師堀が流れていたことに関連すると推測されていますが、詳細は明確ではありません。同年7月には川崎市の市制施行に伴い、川崎市堀川町となりました。1925年には明治製糖の隣接地に明治製菓の川崎工場が開設されるなど、工業地区としての性格を強めていきます。1933年には、川崎市の堀之内、砂子、南河原の各一部が堀川町に編入されました。第二次世界大戦中の1945年には川崎大空襲により、この地域周辺は甚大な被害を受けました。戦後、1964年には堀川町の一部が駅前本町や砂子1丁目、本町2丁目に編入される地域再編がありました。1972年の川崎市の政令指定都市移行と区制施行に伴い、川崎市幸区堀川町となりました。

1980年代以降の再開発の動きは特に注目されます。明治製糖の工場が1980年に移転した後、跡地は住宅展示場として一時的に利用された後、1985年に策定された「かわさきテクノピア構想」に基づき再開発が進められました。1987年から1988年にかけて、川崎東芝ビル、リクルート川崎テクノピアビル（現在の川崎テックセンター）、興和川崎西口ビル、川崎市産業振興会館、住宅・都市整備公団住宅堀川町ハイツなどが次々と竣工しました。このかわさきテクノピアの開発は、いわゆる「リクルート事件」において、容積率緩和を巡る贈収賄疑惑の舞台としても知られています。明治製菓の工場は1989年に閉鎖され、その跡地はかわさきテクノピアの第2期開発として、1995年にオフィス・商業複合施設「ソリッドスクエア」が完成しました。旧東芝川崎事業所は2000年に閉鎖され、その跡地は三井不動産などによる共同事業体によって「ラゾーナ川崎」として大規模開発されました。2006年には商業施設「ラゾーナ川崎プラザ」が開業し、2007年には住宅棟「ラゾーナ川崎レジデンス」が完成しました。さらに、2013年に「ラゾーナ川崎東芝ビル」が竣工し、2014年には東芝未来科学館がこのビル内に移転開館しています。

統計データによれば、2025年（令和7年）3月31日現在の世帯数は3,620世帯、人口は6,381人です。また、2021年（令和3年）の経済センサス調査によると、町内の事業所数は518箇所、従業員数は28,973人となっています。これらの統計データは、再開発による居住人口の増加や、大規模オフィス・商業施設の集積による事業活動の活発化を反映しています。

その他の情報として、堀川町の郵便番号は212-0013であり、川崎港郵便局が集配業務を担当しています。警察については、川崎警察署の管轄区域に含まれています。

堀川町は、かつての工業地帯から、多機能複合型の都市拠点へと大きく変貌を遂げ、交通の利便性と相まって、幸区において重要な役割を担う地域となっています。

もう一度検索