堀江邑一

堀江邑一：激動の時代を生きた経済学者

堀江邑一（ほりえ むらいち、1896年12月18日 - 1991年11月24日）は、日本の経済学者であり、ソ連経済とマルクス経済学を専門としていました。彼は、激動の20世紀を、学者として、また政治活動家として生きました。

生い立ちと学問

徳島県出身の堀江は、京都帝国大学経済学部を卒業後、同大学院に進学し、マルクス経済学者の河上肇の一番弟子として薫陶を受けました。1926年には高松高等商業学校（現在の香川大学経済学部）の教授に就任し、その翌年にはドイツへ留学、ベルリン社会科学研究会（後のベルリン反帝グループ）に参加し、ドイツ共産党に入党しました。

戦前の活動と弾圧

1933年には上海の東亜同文書院に留学しますが、高商時代の政治活動を理由に検挙され、留学から半年足らずで帰国、休職処分となります。1935年には治安維持法違反で有罪判決を受け、教授職を失いました。その後、外務省や昭和研究会の嘱託となりますが、1939年には満鉄調査部嘱託として勤務中に、唯研事件に関与した疑いで逮捕され、年末まで拘留されました。1942年には治安維持法違反で再び関東軍憲兵隊に検挙され、約2年間留置されるという不遇を経験しています。

戦後の活動

戦後、堀江は日本共産党に入党し、1947年の参議院選挙に全国区から出馬しましたが、当選には至りませんでした。1950年にはGHQの命令により、占領政策違反で逮捕されます。しかし、日ソ親善活動にも尽力し、日ソ図書館長や日ソ学園理事長などを歴任しました。日ソ国交回復20周年を記念して、山本薩夫らと共に日ソ平和条約締結を求めるアピールを発表するなど、その活動は多岐にわたりました。

人物像

堀江は、上海留学中に言語学者の陳文彬と親交を深め、帰国後も家族ぐるみの付き合いを続けました。堀江の自宅に陳文彬の子が預けられたことがあり、その一人が後にNHK中国語講座の講師を務めた陳真です。ソ連シンパとして知られていた堀江ですが、一方で、国共合作がソ連の対日戦略の一環であると指摘する論文も発表しています。

主な著作

堀江は多くの著作を残しており、以下はその一部です。

『戦後世界情勢の分析』（1948年）
『資本主義と社会主義』（1949年）
『ソヴエト経済論』（1949年）
『民主主義と社会主義』（1949年）

その他

堀江邑一は、激動の時代を背景に、学問と政治活動の両面で活躍した人物でした。その生涯は、20世紀の日本の社会、政治、経済の変動を映し出す鏡とも言えるでしょう。

晩年

1991年11月24日、肺炎のため埼玉県所沢市の病院で死去しました。94歳でした。彼の死の翌月にはソ連が崩壊し、歴史の大きな転換期を迎えました。

参考文献

『市民・社会運動大事典』日本図書センター、1990年
野田正彰『陳真 戦争と平和の旅路』岩波書店、2004年
鶴見俊輔監修『平和人物大事典』日本図書センター、2006年
大門正克『全集 日本の歴史 第15巻 戦争と戦後を生きる』小学館、2009年

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