堤重久

堤重久：太宰治を最も近くで見た文芸評論家

堤重久（つつみ しげひさ）は、1917年8月21日に生まれ、1999年1月31日に没した日本の文芸評論家であり、京都産業大学の名誉教授です。彼は太宰治の一番弟子として知られ、その文学研究と評論活動を通じて、日本の近代文学に大きな足跡を残しました。

太宰治との出会いと師事

東京新宿の開業医の息子として生まれた堤重久は、旧制東京府立高等学校（現在の東京都立大学）在学中に太宰治の『晩年』を読み、強い衝撃を受けました。当時18歳だった彼は、太宰治の文学に深く心酔し、その影響を受けることになります。府立高の先輩であった小田切秀雄の紹介で、清水幾太郎の門下生となりました。

東京帝国大学（現在の東京大学）文学部独文科に進学した堤は、木村謹治、相良守峯、中島健蔵、辰野隆といった教授陣から指導を受けました。大学在学中には、平田次三郎、山下肇、小島輝正らと共に文芸雑誌「新思潮」に参加し、文芸活動を活発に行いました。

1940年初冬、堤重久は太宰治の門下生となり、師弟関係を結びます。1942年に大学を卒業した後、東大図書館に勤務しながら作家を目指し、長編小説の執筆に励みました。

戦時中には、外交官であった伯父の勧めで外務省に勤務し、外交官試験の準備を行いました。太宰治の死後は京都市に移り住み、京都産業大学で教鞭を執りました。

文学観と太宰治への評価

堤重久は、太宰治の初期作品、特に『晩年』などを高く評価しました。しかし、『人間失格』などの後期作品に対しては否定的な立場を取りました。彼は、太宰治の文学を深く理解し、その変遷を詳細に分析することで、独自の文学観を確立しました。

家族と著書

堤重久の弟である堤康久は前進座の俳優であり、太宰治に『正義と微笑』の材料となる日記を提供したことでも知られています。

堤重久は、以下の著書を著しました。

『太宰治との七年間』（筑摩書房、1969年）
『恋と革命 評伝・太宰治』（講談社現代新書、1973年）

これらの著書を通じて、堤重久は太宰治との交流や、太宰治の文学に対する深い洞察を明らかにしました。彼の評論は、太宰治研究において重要な位置を占めています。

堤重久は、文芸評論家として、また教育者として、多くの人々に影響を与えました。彼の文学に対する情熱と深い知識は、後世に受け継がれています。

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