塩谷温

塩谷温（しおのや おん）

塩谷温は1878年7月6日に東京で生まれ、1962年6月3日に亡くなるまでの84年間の人生を通じて、日本の漢学界に多大な影響を与えた漢学者です。本名は塩谷温、号は節山として知られています。彼は東京帝国大学の名誉教授を務め、その学識と業績は今も評価されています。

来歴

彼は東京市下谷区にて、漢学者である父、塩谷青山のもとで育ちました。学習院を経て、第一高等学校、そして1902年には東京帝国大学の漢学科を卒業し、優等賞を取得しその後、学習院の教授へと就任します。彼の一高時代には、水泳部に所属し、「デカンショ節」と呼ばれる歌を作り上げた逸話もあります。こちらはベートーヴェンの影響を受け、哲学者の名前を取り入れたもので、今でも伝えられています。

1905年には学習院の教授職を、1906年には東京帝国大学の助教授職を得て、さらに留学して中国文学の研究を行いました。1912年に帰国後、元曲に関する研究を行い、1920年には文学博士号を授与され、同年に東京帝国大学の教授となりました。この時期、彼は御講書始や皇子への読書役控を務めるなどの名誉也、1939年に東京帝国大学を定年退官し、名誉教授に就任しつつ、正三位に叙されました。

私生活と恋愛

1948年に塩谷は、長年共にした妻・せつを亡くします。しかし、1949年、36歳年下の元芸者・菊乃と再会。それがきっかけで、1950年から小田原にて同棲を開始し、周囲の注目を集めました。しかし、翌年に菊乃が悲劇的な形で亡くなるという出来事が発生し、塩谷にとって大きな打撃となりました。彼は週刊朝日に手記「宿命」を寄稿し、その心情を記しました。菊乃は遺書を残し、草履を揃えていたことから自殺とされましたが、塩谷自身はその見解を否定しました。このような恋愛の顛末は当時の文人たちに影響を与え、特に永井荷風が注目したといわれています。

研究内容・業績

塩谷温の研究は主に中国近世の小説や戯曲に焦点を当てており、「全相平話」や明の白話小説集『古今小説』を再発見するなど、数多くの貴重な業績を残しました。特に、『新字鑑』は標準的な漢語辞典として広く愛用され続けています。彼の作品や翻訳は、日本の漢文学研究の発展に寄与し、後の世代への道を開きました。

家族・親族

漢学者の家系で生まれた塩谷の大伯父は塩谷宕陰、父の青山も名のある漢学者でした。弟には山井良がおり、その子は東京大学の名誉教授となっている山井湧です。塩谷は二男三女をもうけましたが、家庭生活の中でも学問を大切にし、自らの知識を後世に継承することに情熱を注ぎました。

著作

彼の著作や翻訳には、多くの注釈があり、さまざまな資料が現在も利用されています。塩谷温が残した文化的遺産は、後の世代に引き継がれ続けており、彼の功績がいかに重要であったかを示しています。終生、彼は学問に貢献し続け、死後も勲一等瑞宝章が授与されました。

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