塩谷良翰

塩谷良翰の生涯

塩谷良翰は、1835年7月30日（天保6年7月5日）に、羽前国村山郡の館林藩の飛地である漆山陣屋で、館林藩士・塩谷市郎左衛門の息子として誕生しました。幼名は不明ですが、後に良翰、通称を甲介、直之進、雅号を謙堂と称しました。

幕末の動乱期

11歳頃に館林へ移り、16歳で江戸に出て田口江村、塩谷宕陰、藤森弘庵に学びました。桜田門外の変後、浪士の疑いをかけられ住まいを追われるという経験もしています。文久元年（1861年）には関西を遊歴し、勤王の志士たちと交流を深めました。帰藩後は、藩校・求道館の助教授として後進の指導にあたりました。

明治維新での活躍

明治元年（1868年）の戊辰戦争では、新政府軍が東下する中、館林藩を勤王に導く上で大きな役割を果たしました。大鳥圭介率いる旧幕府軍との戦いでは一時敗北を喫しましたが、その後、奪われた大砲を奪還するなどの活躍を見せました。参謀・大村益次郎の部下として、古河藩、結城藩、宇都宮藩を新政府側に付かせるよう説得する活動にも尽力しました。

その後、大総督府参謀附、民部省大祐を歴任し、紙幣発行にも携わりました。明治2年（1869年）には、甲州で発生した大小切騒動の鎮定に当たりました。

地方官僚としてのキャリア

明治3年（1870年）には、登米県大参事・通商権頭に就任しました。その後、登米県が廃止されたため、仙台県参事心得を経て、明治5年（1872年）に宮城県の初代参事に就任しました。しかし、1873年には辞任し、同年、青森県参事に就任しました。

1876年、明治天皇の巡幸前に、政府の許可なく人事問題で上京したことが問題となり、参事を免ぜられました。

晩年

官僚を辞職した後は銀行業に従事し、1894年（明治27年）には群馬県邑楽郡長に就任しましたが、1896年（明治29年）に非職となり、1899年（明治32年）に退官しました。

1923年（大正12年）10月10日に、88歳でその生涯を閉じました。

塩谷良翰の著作と親族

塩谷良翰は、自らの回顧録を著しており、息子の塩谷恒太郎によって編纂され出版されました。

* 『回顧録』 塩谷良翰述、塩谷恒太郎編、1918年


長男の塩谷恒太郎は弁護士として活躍しました。

まとめ

塩谷良翰は、幕末の動乱期から明治維新、そして地方行政へと、激動の時代を生き抜いた人物でした。藩士、勤王の志士、官僚、銀行家と、様々な顔を持ち、日本の近代化に貢献しました。その生涯は、当時の社会情勢と個人の運命が交錯する歴史の一断面を映し出していると言えるでしょう。

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