多数派 (日本共産党)

多数派の成立とその活動

多数派（たすうは）は、1934年3月に設立され、同年9月まで活動を行った日本共産党の分派です。設立の背景には、1933年12月に発生した「スパイ査問事件」があります。この事件の結果、袴田里見という中央委員が唯一占められることなく、党員の再登録を指示したことに対し、当時の党組織の多くが反発しました。

1934年3月、共産党傘下の農民団体「全農全会派」内のフラクションと、日本無産者消費組合連盟のサポートを受けた宮内勇らによって、「日本共産党△△××細胞会議の声明」が発表されました。この声明は、党中央への批判を含むものであり、昨今の党内の混乱や、指導の逸脱についての懸念が示されました。これにより、彼らは中央部に残った袴田をスパイだと判断し、5月20日に「中央奪還全国代表者会議」を開催し、多数派分派が結成されることとなりました。

この多数派分派には、無消と全農全会派内部の党フラクションに加え、関西の地方組織が参加しました。多くの下部組織が集結したこの運動は、党の上意下達的な方針を批判し、下部組織の意思を尊重した大衆運動を再構築することを目的としていました。しかし、1934年10月から11月にかけて、宮内や山本といった中心的な活動家が全国的に逮捕される事態が発生しました。

さらに、コミンテルン（共産主義インターナショナル）は、多数派を「党攪乱者」とし、その活動を非難しました。1935年8月までに、彼らは直ちに解散するよう求める声明を発表しました。この時期、国際的な圧力や内部の動揺が影響し、多数派の存在意義は問われることになりました。特に、当時のコミンテルンが提示した反ファシズム人民戦線戦術に対する期待もあり、獄中の宮内らにとって、その非難宣言は大きな失望となりました。

残る関西地方委員会の吉見光凡と国谷要蔵も、コミンテルンの批判に従う形で、1935年9月20日に「解体決議」を発出し、多数派は解散しました。この動きは、事実上「下部組織からの日本共産党の再建を目指す運動」だったものの、コミンテルンはその分派を見誤り、党中央組織のリーダーシップのみを支持する見解を固めました。その結果、多数派は挑発的かつ敵対的な分派とする評価を受けることになり、戦後もこのイメージは固定化されました。

その影響の中で、宮内勇は共産党内部に戻ることはありませんでした。彼の経歴や多くの活動家たちが辿った道は、戦前の日本の共産主義運動の複雑さを物語っており、彼らの行動や選択はその後の歴史にも影響を及ぼす要因となりました。

関連文献

• - 伊藤晃 『転向と天皇制：日本共産主義運動の1930年代』 勁草書房、1995年
• - 運動史研究会（編） 『運動史研究1：小特集「多数派」問題』 三一書房、1978年
• - 宮内勇 『ある時代の手記：一九三〇年代・日本共産党私史』 河出書房新社、1973年

このように、多数派の運動は日本共産党の一時的な分派であったものの、当時の党の動向やその後の歴史を理解する上で重要な要素となっています。

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